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MAY 08, 2024 インタビュー

米津玄師のMVで中島セナに一目惚れ!“女性美の魔術師”小島淳二監督が最新映画に込めた真の美しさとは?

ポカリスエットのCMで一躍脚光を浴び、映画『クソ野郎と美しき世界』(18)『光を追いかけて』(21)、さらにはディズニープラスのファンタジー・アドベンチャー大作『ワンダーハッチ -空飛ぶ竜の島-』(配信中)でヒロインを務めるなど、今最も活躍が期待される新星・中島セナ。今回、初の単独主演を務めた青春映画『あこがれの色彩』では、陶芸の町に生きる危うくも純粋なひとりの少女を見事に演じ切っている。

小島淳二監督

メガホンを執るのは、TSUBAKIやマキアージュなど、資生堂のCMを長年にわたって手がけ、“女性美の魔術師”と呼ばれた小島淳二監督。『形のない骨』(18)に続くこれが長編劇映画第2作となる。主演を務めた中島に対して、「あの美しい佇まいは、内面から滲み出てくるもの」と称賛する小島監督に、舞台裏の制作秘話とともに、人間が醸し出す“美”について話を聞いた。

主演を務めた中島セナ

<Story>  伝統的な焼き物の町で、父・信夫と祖母の三人で暮らす14 歳の少女・結衣(中島セナ)は、“美しい”と感じたものを自分の色使いで絵に描くことを唯一の楽しみにしている。美術教室にも通っているが、自分の個性を出すのではなく、基礎知識や技術を重視する教え方にどうしても馴染めない。一方、父・信夫が好意を抱いている若い絵付け師・美樹は、伝統的な絵付け技法を学びながら、自分にしかできない新しいデザインを融合させ、 いつか自分の店を持ちたいと夢見ている。そんなある日、偶然同じバスに美樹と乗り合わせた結衣は、彼女のデザイン画を目にし、その独創的な表現にシンパシーを感じる…。

●キャラクターの“掘り下げ”が映画とCMでは全く違う

 CM界で“女性美の魔術師”と一目置かれる小島監督。しかも、映画のタイトルに“色彩”というワードが入っているだけに、映像美にこだわり抜いたアーティスティックな作品を想像していた。だが、フタを開けてみると、その作風は真逆。心の奥底にある複雑な感情と丹念に向き合う赤裸々な人間ドラマがそこにあった。

「普段は、テレビCMなど広告の仕事に軸足を置いていますが、映画を撮る時は、全てをオフにして作品づくりに集中します」という小島監督。「テレビCMは、映画と違って外見的な美しさをより美しく撮るのが仕事。そのためには、限られた時間の中で、いいカットを数多く撮らなければなりません。映画とは全く違う世界。ただ、だからといって、映画がテレビCMの“対極”にあるという意識はないんです」と持論を述べる。

とは言っても、リアルな少女の心情に迫る本作は、華やかなテレビCMからあまりに乖離(かいり)した世界観…。これについて小島監督は、「あくまでも自分が映画でやりたいことを、一番自分らしい表現方法で撮っていったら自然にこうなった…というのが正直なところ。もちろんアングルや光の具合など、細部にこだわって撮影はしていますが、映画の場合、役者さんがお芝居しやすいように環境を整えたり、物語を上手に伝えられるよう各キャラクターのバックボーンをきちんと説明したり、そちらの方に神経を注ぐ時間が多くなります。表層的な美を追求するCMとそこが大きな違いかもしれませんね」と振り返る。

●人間の一番“柔らかな関係性”が機能すれば豊かな社会に

「私の色は混じりあえない」というキャッチフレーズが示すように、本作は人それぞれの生き様や持ち合わせた個性(=色彩)にフォーカスした人間ドラマ。劇中、「同じ緑色でも人によっていろんな見え方がある」というメッセージ性の高いセリフがこの映画の全てを物語っているようにも思えるが、小島監督にとって、本作で描きたかった“色彩”とは何なのか。そしてそれは、“美しさ”の概念に通じるものなのか?

「例えば、マティスやセザンヌら印象派の画家たちは、私たちが普通に目にする景色をとても魅力的に描き、私たちに大きな感動をもたらします。つまり、内面から生み出された創造物を“発信する側”とそれを“受け取る側”がコミュニケーションを図り、やがて心と心が通じ合う瞬間がくる…この瞬間こそが美しいと思いますし、人として豊かな気持ちになれるんじゃないかと。理想論かもしれませんが、美を創造し享受するという人間の一番“柔らかな関係性”が機能すれば、ギスギスせず、もっと楽しい社会になると思うんですよね」。

混じりあえないからこそ、お互いの個性をぶつけ合い、受け入れ、そして心を通わせる…小島監督の思いは、まさにこの映画に反映されている。

●内に秘めたものが滲み出る中島セナの魅力

そもそもこの物語は、美大受験に苦しんでいた小島監督の娘さんに端を発する。「受験のために美術学校に通っていた娘が、すごく落ち込んで帰ってくる日が何度もあって。聞けば、受験に合格するための絵を描くように指導されること、周りと比べられ順位付けされることが苦痛だったようです。そんな姿を見ながら、『もっと自由に描けたらいいのに』と思ったのが全ての始まりでした」。さらに、小島監督の地元・佐賀県西部の焼き物の窯元が衰退の一途をたどっているという悲しい現実が物語に交わってくる。

「職人が丁寧に作り込んだ焼き物は確かに高価なものが多いですが、『100円ショップのお皿でいいんじゃない?』という風潮はあまりにも寂しすぎます。昭和の時代は、季節や催し物ごとにそれにふさわしい柄のお皿を出してきて盛り付けをしたり、そのお皿について話をしたり…『昔はよかった』ではないですが、心がとても豊かだった気がするんですよね」。悩める受験生と衰退する窯元、二つの切ない思いが重なり合うことで、映画『あこがれの色彩』の企画がついに動き始める。

主人公は、焼き物の町で育った14歳の少女。徐々に廃れていく窯元を肌で感じながら、自身も大好きな絵を自由に描けないジレンマに陥っている。この役を誰が演じれば、映画の軸として成立するのか。キャスティングに悩んでいた小島監督は、あるミュージック・ビデオ(MV)で、中島セナと運命の出会いを果たす。

「米津玄師さんのMVをプロデュースしている友人がいて、『中島セナさん、すごくいいよ』って教えてくれたので、試しに映像を観てみたんです。もう完全に一目惚れでしたね。その凛々しい表情と佇まいに気持ちを全部持っていかれました。しかも、中島さんご自身が、趣味で毎日絵を描いているということで、彼女なら何ものにも染まらない主人公の孤立感をリアルに表現してくれるんじゃないかと。結果は…観ていただければわかります」。そう笑顔で語る小島監督、どうやら中島の不思議な存在感に心酔してしまったようだ。

「中島さんは、役の理解力も、作品に対するコメントも、全て的確で、自分をしっかり持っている方。撮影当時14歳とは思えないその美しい佇まいは、彼女の内面から滲み出ていくるものだと思うんですよね。ぜひ、皆さんの目に焼き付けてほしいです。それだけでもこの映画を観る価値がありますから」。本作が生み出した最大の創造物は、結衣に憑依した中島セナかもしれない。

(取材・文・写真:坂田正樹)

小島淳二(こじま・じゅんじ):映画監督/CM ディレクター。資生堂、Honda、uniqlo、全日空などの TVCM、ミュージックビデオなど多くの映像作品を輩出している。映像作家と してオリジナルショートフィルムの制作にも積極的に取り組み、その作品は RESFEST(USA)やonedotzero (UK)など海外の映画祭でも注目を集めている。Jam Films 2 の 1 本として劇場公開された”机上の空論”では、RESFEST2003 にて”AUDIENCE CHOICE AWARD”を受賞。第 57 回ベルリン国際映画祭コンペティション部門に「謝罪」出品。2018 年、映画『形のない骨』で長編映画監督デビュー。第 72 回ワルシャワ国際映画祭コンペティション部門にノミネート。

<Staff&Cast>  出演:中島セナ、大迫一平、宮内麗花、安原琉那、MEGUMI/監督:小島淳二/撮影:安岡洋史/照明:根岸謙/録音:阿尾茂毅/美術:古本衛(TRY2 )/音響効果:ジミー寺川/衣装:Toshio Takeda(MILD)/ヘアメイク:木戸友子/助監督:中村周一/制作主任:長沢健一/プロデューサー:荒木孝眞/グラフィックデザイン:丸橋桂/配給:スタジオレヴォ/制作:teevee graphics,INC. /協賛:佐賀県フィルムコミッション 2022年/日本/カラー/107分/17:9/5.1chデジタル/公式サイト:https://akogare-iro.jp

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映画『あこがれの色彩』は5月10日(金)より渋谷シネクイントほか全国順次公開

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