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JUN 28, 2023 インタビュー

若月佑美「悲しみさえも楽しんで」父の言葉を支えに女優業をまい進

若月佑美  ■ヘアメイク:永田紫織(Nous)/スタイリスト:蔵之下由衣(commune ltd.,)

2019年、女優として本格始動した若月佑美が、同年8月より、「週刊SPA!」にて約3年半にわたり連載してきた『履きなれない靴を履き潰すまで』(扶桑社)が、このたび1stフォトエッセイとして、自身の誕生日である6月27日に扶桑社より発売された。連載時未掲載カットや若月自身がコンセプトを考えた撮り下ろし写真、さらに本書のために新たに撮影したカット、新作エッセイなども収録され、表紙は3タイプを用意するという豪華版だ。内面から溢れ出る言葉たちを一冊の本にまとめたこの集大成を前に、若月自身は今、どんな思いを抱いているのだろうか。

●人に優しく自分に厳しいからこそ刺さる言葉

――若月さんが紡いできた言葉たちが1冊の本となって皆さんの手元に届くわけですが、今の率直なお気持ちをお聞かせください。

若月:まず、一冊の本として形になったことが素直に嬉しいですね。始めた頃の文章と最後の文章を比べながら自分自身の変化を知ることもできますし、世代を問わず、いろんな境遇、いろんな場所で頑張っている皆さんにお手に取ってもらえる機会が増えたこともとてもありがたいなと思っています。

――タイトルがいいですね。この言葉に込めた思いはどんなものだったのでしょう。

若月:この連載を始めたのが、グループを卒業し、女優として新たな活動をスタートさせた時期とちょうど重なったので、「新しい靴を履いて、また一歩踏み出します」っていう気持ちと、その靴を履き潰すまでの間に感じたことを書き記していきたいなと思ってこのタイトルに決めました。

若月佑美1stフォトエッセイ『履きなれない靴を履き潰すまで』(通常表紙版)

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――「履き潰す」というところがすごく気になりました。

若月:女優として活動しているので、役によって違う靴にどんどん履き変えていく、という意味でもあるんですが、その靴が足に馴染んできた頃に、次の新しい靴に履き変えなければならないので、「履き潰す」というところまではなかなかいかないというのが現状ですね。ただ、いただいた役を精一杯演じる、その時その時を精一杯生きる、という気持ちは常に持っているので、その思いをタイトルに込めました。

――この3年間、女優として、そして一人の女性として、いろんなことを経験しながら、その思いを文章に書き記してきたと思いますが、改めてこのフォトエッセイを読み返してみると、何かご自身の中で変化したこと、気付いたことはありますか?

若月:ありますね。価値観がどんどん変わっていって、書く文章も変化しているので、3年前に書いたものを見ると、「こんなことを思ってたんだ」っていう発見や驚きもあります。最初は自分の気持ちと向き合った文章を書いていたんですが、途中から人の感情にも介入するような文章も増えてきて。これは私の性格かもしれませんが、人から相談を受けることが凄く多くて、いろんな悩みを聞いているうちに、その人たちの気持ちに寄り添った文章も途中からどんどん増えていきました。

――このエッセイを読んでいて思ったのが、誰かの背中を押す時の文章って凄く頼もしくて、優しくて、力強いけれど、若月さんご自身に矢印が向いている言葉は少し厳しめだなと。

若月:確かに。先程、人から相談を受けることが多いと言いましたが、実は私自身、人から相談を受けることが大好きで、「力になりたい!」ってめちゃくちゃ思うタイプなんですね。でも、逆に自分は、人に悩みを相談することがなかなかできない性格なんです。だから、ついつい自分に厳しくなり、考え方も鋭いものになってしまうところはありますね。

――そこが若月さんの親分肌というか、人を惹きつけるところかも。

若月:どうなんですかね。でも、基本的にこのエッセイでは、いろんな考え方を頭ごなしに否定せず、いいところを肯定し、気持ちに寄り添うようなものにしたいと思って書いていたので、読んでくださる方が優しい気持ちになっていただければ嬉しいです。

●面倒くさい性格から生まれる面白い視点

――昔から文章を書くことが好きだったんですか?

若月:幼稚園の頃はどちらかというと絵を描くことが大好きでした。それも抽象画が多くて、感情を絵にして発散するタイプだったんです。でも、大きくなるにつれて、絵を描く前に、「何を思って、それをどう絵にしたいのか」っていうことを頭の中で整理するために文章を書くようになって、それがだんだん膨らんでいったという感じですね。

――絵を理論化して描くって凄いですね!それって今も?

若月:今もそうですね。だから、友だちからも、「本当に面倒くさい」って言われますし、母親からも、「その面倒くさいところが父親にそっくり!」って言われます(笑)

――え?人に迷惑がかかるくらい面倒くさいって…

若月:考え症なんですよね。疑問に思ったら、もう全部ぶつかるんですよ。例えば、数学で、「この公式を使って、問題を解いてください」って言われたとするじゃないですか。そうすると、「その公式はどうやって出来上がって、誰が決めて、なんでこうなったのか」っていうことをちゃんと理解できないと、「使えません!」ってなるんです。そういうところが父親と全く一緒らしいんですが、本当に面倒くさいですよね(笑)

――全て鵜呑みにして教育を受けてきた身としては、ある意味、尊敬します(笑)

若月:あと、視点をどんどん変えて見てしまう癖があって、映画を見ていても、主人公の感情に沿って見ていけば、「凄く感動したね」で終わるんですが、「ちょっと待って!主人公の隣にいた親友の気持ちになったら、これ、ハッピーエンドで終わらないよ」とか言い出して、また友達から、「面倒くさい!」って言われちゃうんです(笑)

――でも、その若月さん独特の視点や物事に対する執着心が、今回のエッセイにも生きていて、深いからこそ刺さる言葉が生まれてきているように思います。

若月:そう言っていただけると嬉しいです。確かに面倒くさがられることもありますが、自分で疑問に思ったことを文章に書いて、人にその思いを伝えたら、「そういう視点もあったのか」「新しい発見になったよ」って言ってもらえることも多いので、それがなんだか嬉しくて、こうして文章を書くことが日常化しているところもありますね。

●自分で自分に後悔しなければ怖いものはない

――女優として日々精力的にされていると思いますが、若月さんの心の支えになってる「言葉」って何かありますか?

若月:このエッセイの中にもある「楽しんで」っていう父親の言葉が私は大好きなんですね。悲しいという感情すら楽しんだ方がいいと。例えば、オーディションなんかでも、受ける前は緊張しますし、終わったら終わったで「落ちたらどうしよう」って不安になったりするんですが、父親から言わせると、オーディションを受けるということ自体、人生で経験する人なんてほんの僅かだと。逆にオーディションを受ける立場にいることが「尊い経験なんだ」と言ってくれて。せっかくその立場にいられるのなら、負の感情ばかり持っていたらもったいないよと。確かに人は「嬉しい」を探して生きてるから、「悲しい」はない方がいいけれど、それを感じられることも素晴らしい経験だと父親に教えてもらったので、しっかりと受け止めて前に進むことを心がけています。

――「悲しいという感情すら楽しんだ方がいい」っていい言葉ですね。

若月:その延長線上ではありますが、「自分で自分に後悔するな」という言葉を座右の銘にしていて、この言葉があれば「オールOK」みたいなところがあるんです。例えばグループ時代に舞台をやる機会があって、そこでは1部、2部でオーディションがあるんですが、演劇をやる2部では16人しか舞台に立つことができないんですね。最初、私も全然選ばれない時期があって、凄く辛かったんですが、「どうして選ばれなかったんだろう」とか、「必要とされてないのかもしれない」とか、ネガティブな方向に流されている自分にハッと気が付いて、「自分ができることを全て出し切ってベストを尽くしたんだから後悔なし。次またがんばろう!」という考えに切り替えたんです。そしたら急にスカッとして。結果はどうあれ、「やりきる」「出し尽くす」ということが一番大事なんだとわかったら、怖いものがなくなりました(笑)

――「選択」というテーマのエッセイもありましたが、例えば女優業でいえば、売れる売れないという観点もあるだろうし、いろんな役に挑戦したいという欲求もあるだろうし、あるいは、自分の中で芸術性をとことん突き詰めたいという方も中にはいるでしょう。人によって選択基準がいろいろあると思いますが、若月さんご自身はどの辺りにポイントを置いて女優業に取り組んでいるのですか?

若月:実際はマネージャーさんと相談をして決めることが多いんですが、私個人としては、拘束時間がどうとか、どれぐらいの規模の劇場で公開されるとか、そういう数の問題は一切考えず、自分の心が動いたものは何でも挑戦したいなと思っています。それに、自分の人生の中で演じられる役の数って限られていると思うので、求められものがあればできるだけたくさん応えていきたいと思いますし、先程の話ではありませんが、「やる!」と決めたら、自分が納得できるまで「やり切りたい」という気持ちは常に持っています。

――最後にラジオ『若月佑美と工藤遥のMBSヤングタウン』(MBSラジオ)で若月さんと一緒にパーソナリティーを務めている工藤遥さんにひと言いただけますか? 先日、映画『逃げきれた夢』で工藤さんをインタビューした際、「“若”と共演するのが夢」とおっしゃっていたので。

若月:どぅーちゃん(工藤の愛称)は、私と同じくグループ出身で、ポジションも似たところもあって、一緒にいると会話も弾んで凄く楽しいんですよね。プライベートでご飯を食べに行った時はいろいろ情報交換したりしています。実は私、ラジオを一緒にやる前にオーディション会場で会ったことがあって、その中で彼女のお芝居が一番好きだったんですよ。「あの子、お芝居上手だなあ」って。それがどぅーちゃんを記憶した最初の出来事。だから私も、彼女のことを女優として凄く尊敬していますし、ぜひいつか、共演してみたいなと思っています。(取材・文:坂田正樹)

■ヘアメイク:永田紫織(Nous)/スタイリスト:蔵之下由衣(commune ltd.,)

若月佑美1st フォトエッセイ『履きなれない靴を履き潰すまで』 は扶桑社より 6 月 27 日(火)発売

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