突き抜ける限界知らずの発想力、溢れ出る命への尊厳心…深刻な社会問題をさらりと織り込みながら、極限状態に置かれた人間の“本質”をエンタテインメントに包み込む唯一無二のポン・ジュノ節にまたしてもやられた。心の奥底から湧き起る、かつて味わったことのない感動と興奮…いったいこの映画は何なのだ!

映画『パラサイト 半地下の家族』(2019)で第72回カンヌ国際映画祭パルム・ドール、そして第92回アカデミー賞®作品賞、監督賞、脚本賞、国際長編映画賞の最多4部門を受賞。誰もが予測できない怒涛の展開をサスペンスフルに描き世界の映画ファンを熱狂させたポン・ジュノ監督最新作『ミッキー17』が3月28日(金)、ついに日本劇場公開の日を迎えた。今度は、「半地下」を超えた「人生どん底」…使い捨てワーカー“ミッキー”が権力者たちに反撃を開始する逆襲エンターテイメントだ。
今頃、劇場で本作を目撃した観客は狂喜乱舞しているところだと推察するが、これから鑑賞する方、あるいは鑑賞を検討している方々のために、今回 「人間の残酷さと変わらぬ美しさ」にフォーカスした特別映像を紹介。人生どん底のミッキー役を務めたロバート・パティンソンのインタビューを交えながら、「世界には希望がいる!」と逆襲を開始する新たなヒーロー誕生を垣間見ることができる。
●ポン・ジュノ監督と役所広司がエールを交換!
ポン・ジュノ監督と役所広司…世界で活躍するアジアを代表する2人の映画人が時を超えたエールの交換を果たした。ことの始まりは、役所広司に対して特別な思いを寄せるポン・ジュノ監督が、西川美和監督作品『すばらしき世界』(2021)に主演した役所の壮絶なまでの演技に「すべてが輝いている」と驚嘆し、ロングレターを贈ったこと。

その手紙には、「果たして、映画が始まってものの数分で、私たちは役所広司という俳優ではない、不遇な生い立ちを背負った一匹狼の元やくざ、三上という生々しい生き物を目にすることになる。表情や目つき、わずかな手の動きや仕草で、主人公の人生の履歴を余すところなく表現してしまう役所広司の驚くべき説得力にあらためて感服した」とし、「とにかく私たちはその過程で、アジアの大俳優・役所広司がある若い男の脇腹を食いちぎりながら爛々と目を輝かせる、奇異な名場面も目撃することになる」と感動の言葉が綴られていた。
『すばらしき世界』の公開後も、役所広司とポン・ジュノの物言わぬ友情は続いた。そして今回、ポン・ジュノ監督の『ミッキー17』をいち早く鑑賞した役所広司は、ロングレターへの返信として映画愛に満ちたコメントを寄せたのだ。以下、全文を紹介する。
劇場は、独特のブラックなユーモアで笑い声に包まれるだろう。そして、我々は見たこともない世界に連れていかれる。幼少期に自分がやらかしていた残酷な遊びを思い起させられる…(-_-;)。今作もポン・ジュノ監督は、観客を大いに楽しませながら、人間の残酷さと変わらぬ美しさをみせてくれた。ーー役所広司(俳優)

■そのほか映画業界から激賞コメント続々到着(50音順/敬称略)
甲斐さやか(映画監督・脚本家):ポン・ジュノ監督は、とうとう時代を突き抜けてしまった。『⽬⽴ちたがり屋の独裁者』に全⾝を搾取される『下級国⺠』。倫理なき環境に慣れてしまう⼈間の怖さとリアリティ。私たちは、⾮情さがエスカレートした未来へ未来へと、このまま押し流されてしまうのか。鑑賞後、波に襲われるように胸がかき乱される。痛快で⾒事な、私たちが今観るべき映画。
川村元気(映画プロデューサー・映画監督・小説家):はるか遠くの星の物語を、いま僕たちが生きる世界の物語としてポン・ジュノは突きつける。果たして僕たちは、何番目のミッキーなのだろうか。
佐藤嗣麻子(映画監督・脚本家):豪華で贅沢な不条理SF映画!往年の日本人にはなじみ深い手塚治虫や藤子不二雄SFのようでもあり、萩尾望都の一角獣種シリーズのA-A’のようでもあります!そして、登場する現住生物はまるでナウシカのオーム!主人公のミッキー17は気弱で、18はまるでバットマンのパディンソン!悪役の政治家はトランプ大統領と民主党のペローシ元議長を彷彿させます!いやぁ、風刺や皮肉やブラックユーモアがたっぷりで!めちゃめちゃ楽しかった!みんな、見て、見て!
樋口真嗣(映画監督ほか):戯作者たるもの、本当にやりたい題材に向き合うべきなのか、悩ましい問題だけど、どうせ一度の人生であれば好きなことだけをやるべきだと個人的には思います。無邪気にはしゃいで想像の世界を走り回るその姿を見て微笑ましい気持ちに満たされるのもイイものです。分析も考察も大いに結構!でも「グエムル」から入った後発組の俺は声を大にして応援したいですね。 「イイぞもっとやれ!」
町田啓太(俳優):生存本能を掻き回されるほどの衝撃作。地球上でも宇宙のどこに行っても人は人。人間として、生命体としての生き方を問われました。
山崎貴(映画監督):なんだこの見たことのない面白さは!と見ている間ずっと興奮していました。悲惨でブラックでとにかく考えうる限り最悪な状況の中で文字通り“必死”に自分を取り戻していくミッキーが最高!推せます!最後の怒涛の展開には立ち上がって拍手したくなりました。絶対劇場で体験して下さい。

<Story> 人生失敗だらけの“ミッキー”(ロバート・パティンソン)が手に入れたのは、何度でも生まれ変われる夢の仕事、のはずが……⁉それは身勝手な権力者たちの過酷すぎる業務命令で次々と死んでは生き返る任務、まさに究極の“死にゲー”だった!だが、ブラック企業のどん底で搾取されるミッキーの前にある日、手違いで自分のコピーが同時に現れ、事態は一変。使い捨てワーカー代表として、ミッキーの反撃が始まる。
<Staff & Cast> 監督・脚本:ポン・ジュノ/出演:ロバート・パティンソン、ナオミ・アッキー、スティーブン・ユァン、トニ・コレット、マーク・ラファロ/製作年:2025年/製作国:アメリカ/映倫区分:G/配給:ワーナー・ブラザース映画/公式サイト:mickey17.jp
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