これまで、無戸籍、東日本大震災、売春島、孤独死など、社会的なテーマのオリジナル作品を描いてきた劇団・チーズtheater。今回、杉咲花主演で映画化された『市子』の大ヒット公開を記念して、原作である同劇団の代表作『川辺市子のために』を再演することが決定した(上演日程は、2024年2月3日(土)~12日(月)、劇場は新宿サンモールスタジオ)。それに伴い、全出演者、メインビジュアルが解禁。劇団員で市子役を務める大浦千佳、映画の監督も手がけた作・演出の戸田彬弘のコメントも到着した。
<Focus Points> 通常の戸籍は、子供が生まれ、自治体に出生届を提出することで作られる。だが、何らかの事情でこの出生届が提出されず、戸籍のないまま生きている人たちがいる。そんな無戸籍の人々が日本には1万人以上もいる。この事実を元に、徹底的なリアリズムに拘った戯曲『川辺市子のために』がチーズtheaterによって、2015年、誕生した。本作は、サンモールスタジオ選定賞2015にて最優秀脚本賞を受賞。受賞理由は「モデルが間違いなく居ると思わされる圧倒的なリアリティ」と称され、その後2度再演。多くの観客を魅了する人気作品となった。
舞台劇『川辺市子のために』のワンシーン
あれから8年後、『川辺市子のために』は、『市子』とタイトルを変え、杉咲花主演で映画化。2023年10月にはアジア最大級の国際映画祭である第28回釜山国際映画祭コンペティション部門の1つであるジソク部門、第36回東京国際映画祭Nippon Cinema Now部門に正式出品され、2023年12月8日(金)に晴れて全国公開。現在、多くの観客の心を鷲掴みにし、当初の予想を超える大ヒットを記録している。
この映画公開をきっかけに、今度は逆に再演が決定した舞台劇『川辺市子のために』。初演から主人公・川辺市子を演じ続けてきた大浦千佳が再び川辺市子役を演じることが決定し、これを受けて大浦は、「 2018年上演時、無戸籍の当事者の方に舞台を観ていただく機会があり、終演後、『私たちのことを、取り上げてくれてありがとう』と言っていただいたことは、今でも忘れません。今回、川辺市子役をやらせていただくことは、正直、辛く不安で恐いです。でも観てくだった方々が、何かを感じ取って、何かを想うことがあれば、それは川辺市子が広まることであり、社会の歪みを問えることだと願っています 」と、心の内をを吐露。
一方、作・演出を手掛けた戸田は、「『川辺市子のために』を再演出来ること、非常に嬉しくもあり、緊張もしています。映画化するにあたり、戯曲を見つめ直しブラッシュアップしました。ただ、それは映画という媒体に特化する為でもありました。演劇はまた違う作品です。素晴らしい演劇体験を提供できるように、仲間と共に稽古をしていけたら」とコメントしている。
出演者には、大浦のほかに演劇界の重鎮・寺十吾、映画『この日々が凪いだら』のサトウヒロキ、初演から川辺市子の母親川辺なつみ役を演じ続けている田山由起など、総勢10名の実力派俳優が勢揃い。劇団チーズtheaterとして、原点であり新たなチャレンジとなる本公演、映画版を観て原作が気になった方が、その違いを感じていただくのも見所の一つとなっている。
<Staff&Cast> 主催:劇団チーズtheater/協力:チーズfilm/提携:サンモールスタジオ/作・演出:戸田彬弘/舞台監督・舞台美術:吉川尚志(劇団SURF SHOP)/照明:阿部将之(LICHT-ER)/音響:水野 裕、設楽明日花/衣装:大浦千佳/制作:塩田友克/宣伝美術:下元浩人(EIGHTY ONE)/宣伝写真:伊藤星児/出演:大浦千佳(チーズtheater)、サトウヒロキ、平井珠生、花村柚祈、植田慎一郎朝田淳弥、きばほのか/奥田 努(ジュニアファイブ)、田山由起、寺十吾(tsumazuki no ishi)