『オールド・ボーイ』(04)でカンヌ国際映画祭グランプリ、『別れる決心』(22)で同映画祭監督賞を受賞。常にタブーを打ち破り、緻密なミザンセーヌと妥協なき独自の映像美学で観客を魅了してきた巨匠パク・チャヌク監督が、名優イ・ビョンホンと『JSA』以来、実に25年ぶりにタッグを組んだ最新作『しあわせな選択』が公開中された。各メディアのレビューを拝見すると、賛否両論渦巻いているが、バックヤード・コム編集部は傑作としてこの作品に拍手を贈る。
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実は本作を観ながら、フランス映画祭横浜2005で鑑賞したコスタ=ガヴラス監督作『斧』(原作:ドナルド・ウェストレイク)を想起していたのだが、やはりこの物語、同作をベースにしていたことがエンドクレジットで判明した。『斧』を観た方はほとんどいないはずなので、ちょっとした優越感を覚えつつ、ガヴラス版に勝るとも劣らないエキセントリックな展開に狂喜乱舞していたのだが、主人公のあまりにも視野が狭く身勝手な“選択”に、「いったい何を見せられているのか」という書き込みがとても多くて驚いた。
ブルーカラーから叩き上げで昇進し、製紙会社に全身全霊を捧げてきた一家の大黒柱が突如解雇。エリート意識のないただの頑張り屋さんだっただけに、この先どうしていいのか、怒りの矛先も定まらない。やることなすこと稚拙で不安定、挙句の果てに解雇した会社側の人間ではなく、再就職のライバルたちを抹殺するというアホなのか、ポジティブなのか、よくわからない決断を下す。
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ここがどうも不評のようだが、むしろここがこの映画の重要なポイント。パニックに陥った超ド素人の殺人計画がとんでもないドタバタを生み、ユーモアとサスペンスのシーソーを揺らしながら、チャヌク監督は愚かさを含めた人間の悲哀にメスを入れる。「最終的に、この男が守りたかったのは何なのか?」AIが精度を高め、軽やかに労働する時代になれば、こんなドロドロした殺人劇など、起こる起こらないを通り越して発想すらないだろうが、それぞれの国、それぞれの社会で必死に生きる人間という“生物(なまもの)”は、そこはかとなく深遠な宇宙であることを再認識する。
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<Story> 「全てを叶えた」—— 製紙会社で25年間、堅実に仕事をしてきたマンス(イ・ビョンホン)は、心からそう思い、妻(ソン・イェジン)と2人の子供、2匹の犬と郊外の大きな家で“理想的”な人生を送っていた。突然、会社から解雇されるまでは。必死に築いてきた人生が、一瞬のうちに崩壊!好調の製紙会社への就活も失敗したマンスが閃いたのは、衝撃のアイデアだった。それは「ライバルがいなくなれば、仕事は手に入る」という究極の選択…
<Staff & Cast> 監督:パク・チャヌク『オールド・ボーイ』『お嬢さん』『別れる決心』/出演:イ・ビョンホン 『コンクリート・ユートピア』「イカゲーム」、ソン・イェジン 『私の頭の中の消しゴム』「愛の不時着」、パク・ヒスン 『警官の血』、イ・ソンミン 『ソウルの春』、ヨム・ヘラン 「おつかれさま」、チャ・スンウォン 「暴君」/2025年|韓国|韓国語・英語|カラー|スコープサイズ|139分|日本語字幕:根本理恵|英題:NO OTHER CHOICE|PG-12/提供:木下グループ/配給:キノフィルムズ

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