『哀れなるものたち』『女王陛下のお気に入り』など一筋縄ではいかないヒロイン像で世界に衝撃をもたらした名匠ヨルゴス・ランティモス監督が、エマ・ストーンと5度目のタッグを組み、さらに『ミッドサマー』のアリ・アスター、『パラサイト 半地下の家族』の製作陣をプロデューサーに迎え、新たな領域に挑んだ異色サスペンス『ブゴニア』が2月13日(金)よりTOHOシネマズ 日比谷ほかにて全国公開される。

試写会はどの日もほぼ満席、注目度の高さから会場内はいつも以上に熱気で溢れている。原作は、2003年に製作された韓国の伝説的なカルト映画『地球を守れ!』。この映画は未見だが、なんとなくカルト的ムードがぴたりハマって、ヨルゴス・ワールド大全開、凝りに凝った奇天烈なSF映画になりはしないか?…個人的にはそれも有りと思いながらも、やや一抹の不安も抱えていたのだが、蓋を開けてみたら、万歳三唱!混沌とした現代社会を風刺した猛毒ブラックユーモア満載の“ジェットコースター・エンタテイメント作品”に仕上がっていた。つまりはヨルゴス監督の新境地、独創的ではあるけれど、娯楽映画として実に痛快で面白いのだ。


この映画の見どころは、もはやヨルゴス監督の相棒と言ってもいいエマ・ストーン(今回は製作にも参加)の圧倒的存在感だ。オフィシャルインタビューで彼女は、「この作品は、小世界を表現していると思う。とても狭い空間で、狂気と社会批判が展開していく。ヨルゴスは、そういう空間に惹かれるんだと思う。舞台は地下室で、間違った考え方、あるいは歪んだ考え方をしている人たちが、お互いと会話をする場面がほとんどなの。でもそこで様々な人間の姿や、何かを信じ込むことでどんどん堕ちていく姿を映し出している」と語っているが、『哀れなるものたち』『女王陛下のお気に入り』もまさに“小世界”での歪んだ思考の成れの果てを描いており、テーマ、舞台設定的に本作は、ヨルゴズ監督の真骨頂。それを体現するのがエマ・ストーンなら、もう間違いはない。

エマ・ストーン演じるミシェルは、まるで『パラサイト 半地下の家族』を彷彿させる大邸宅で暮らすカリスマCEO。朝からジョギング、ヨガ、格闘技をこなすスーパーウーマンの彼女に、ジェシー・プレモンス&新星エイダン・デルビス演じる陰謀論者の凸凹コンビは、ある日、「お前は宇宙人だ!」と言いがかりをつけ、「地球侵略は許さん!」とばかりにミシェルを誘拐する。(ガチで)丸坊主に髪を剃られ、地下室に閉じ込められた彼女は、その日から、凸凹コンビの難グセに知性と度胸で応戦しまくるのだが、この押し問答がまったくかみ合わず、その奇妙なズレに思わず吹き出してしまう。最初は漫才、ところが会話を重ねていくごとに何が真実で何が虚実かわからない不安定な恐怖が背中からゾゾッと押し寄せてくるのだ。
ミシェルに降りかかった災難は果たして解決を見るのか?それとも凸凹コンビの暴走はさらに加速するのか?二転三転する駆け引きの果てに、物語は全く予期せぬ展開へと発展していくのだが、それは観てのお楽しみ。『哀れなるものたち』よりゴア描写は抑え気味、観客のマインドを巧みにコントロールするサウンド効果のうまさは健在、ビスタヴィジョン撮影方式による豊かな映像美は映画館でこそ価値が高まる。本年度アカデミー賞®作品賞・主演女優賞(エマ・ストーン)、脚色賞。作曲賞など4部門ノミネートの賞レースも楽しみだが、まずは百聞は一見に如かず。ヨルゴズ監督&エマ・ストーンが紡ぎ出す独特の世界観を存分に味わっていただきたい。
-724x1024.jpg)
<Story> 人気絶頂のカリスマ経営者として脚光を浴びるミシェル(エマ・ストーン)が、何者かによって誘拐された。犯人は、ミシェルがCEOを務める会社の末端社員テディ(ジェシー・プレモンス)と、彼の従弟ドン(エイダン・デルビス)の2人組。陰謀論に心酔する2人は、ミシェルが地球を侵略しにきた宇宙人だと信じ込み、彼女に今すぐ地球から手を引くよう要求してくる。彼らの馬鹿げた要望を一蹴するミシェルだが、状況は思わぬ方向へと加速していき、荒唐無稽かに思えた誘拐劇は誰も予想しえなかった衝撃の終末へと突き進んでいく——。
<Staff & Cast> 監督:ヨルゴス・ランティモス/製作:ヨルゴス・ランティモス、エマ・ストーン、アリ・アスター、ミッキー・リー、ジェリー・ギョンボム・コー/脚本:ウィル・トレイシー/出演:エマ・ストーン、ジェシー・プレモンス、エイダン・デルビス/原題:Bugonia/2025年/アイルランド・イギリス・カナダ・韓国・アメリカ/カラー/ビスタサイズ/118分/字幕翻訳:松浦美奈/PG12配給:ギャガ ユニバーサル映画/公式サイト:https://gaga.ne.jp/bugonia/
🄫2025 FOCUS FEATURES LLC.












