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APR 14, 2024 イベント

フランス・ノワールの傑作が目白押し!裏社会の闇を描く犯罪映画特集『フィルム・ノワール映画祭』4/27より新宿 K’s cinema にて開催

フランスの映画批評家ニーノ・フランクが第二次大戦中に製作されたアメリカの犯罪映画を”フィルム・ノワール”と称したことから、その歴史は始まった。源流は 1930 年代に一世を風靡したギャング映画にあると言われているが、フィルム・ノワールはフリッツ・ラングやロバート・シオドマク、ジャン・ルノワールら、ヨーロッパから亡命した映画作家の再出発の場となり、アンソニー・マン、ジョセフ・H・ルイス、ニコラス・レイ、リチャード・フライシャーらアメリカの若き映画作家たちの登竜門となった。

やがて、ハリウッド映画史にその名を刻む名監督たちが描き出したアメリカの闇は、ジャン=リュック・ゴダール、フランソワ・トリュフォーが高評価したことからフランス映画界に深く浸透、1950 年代ヌーヴェル・ヴァーグ以前のフランス映画界に大きな影響を与え、以降、多くの“フランス・ノワール”が製作された。今回の『フィルム・ノワール映画祭』では、アメリカのノワールとはひと味違う独自の世界を繰り広げるフランス・ノワールを中心に、近年ほぼ上映されてこなかった犯罪映画の魅力を突きつめる。ちなみにバックヤード・コム(坂田)激推し作品は、『雨の訪問者』。フランシス・レイの美しいメロディに包まれながら、チャールズ・ブロンソン演じる謎の男の想いが“クルミ”に宿る。

◉上映作品紹介

■『雨の訪問者』1970│119 分│カラー│BD

監督:ルネ・クレマン 原案・脚本:セバスチャン・ジャプリゾ 主演:チャールズ・ブロンソン、マルレーヌ・ジョベール
⚫︎雨が降り続く季節外れの避暑地、バスから降りた赤いバッグを持つ男、窓を通して男を眺める女。その女のもとに、夜その男がやってくる。乱暴された女は男を撃ち殺し、崖から捨てるが、翌朝、彼女のもとにある男がやってきて全てを知っているという。男は誰なのか、殺された男は誰だったのか。女の名はメランコリー、女の記憶の映像が突然差し挟まれたり、南仏の家庭からパリの娼館に場面が移り変わったり、物語は錯綜するが、クレマンの情感溢れる映像美、フランシス・レイの華麗な音楽によってメランコリックな雰囲気に包まれる。


■『さらば友よ』1968│115 分│カラー│BD

監督・脚本:ジャン・エルマン 原作・脚本:セバスチャン・ジャプリゾ 主演:チャールズ・ブロンソン、アラン・ドロン
⚫︎アルジェリア帰りの二人の兵士、アラン・ドロンとチャールズ・ブロンソン。ドロンは自分が死なせた友のために、金庫破りをすることに。いっちょ噛みさせろとブロンソンが勝手に参加、凸凹コンビがクリスマスの深夜に、何万通りもある金庫の番号組み合わせをひたすら試しつくす。ようやく開いたと思ったら金庫は空っぽ、これはどういうことなのか。サスペンス、ノワールにコメディー要素も加えた異色作。警察に追われることになった二人が互いに相手を庇おうと知らぬふりをする友情ともいえる男気が泣ける。

■『太陽の下の 10 万ドル』1965│125 分│モノクロ│BD

監督・脚本:アンリ・ヴェルヌイユ 脚本:マルセル・ジュリアン 主演:ジャン=ポール・ベルモンド、リノ・ヴァンチュラ
⚫︎何か訳ありげな荷物を新品のトラックに積み、しかも新入りの運転手に運ばせる。いつもと違う業務に不審を持つ運転手たち。翌朝、そのトラックを勝手に運転して行った男を、社長が追わせる。明らかに荷物は金目のものだ。追う側もあわよくば自分が、と色めき立つ。舞台は北アフリカ、砂漠と山並みがシネスコ画面に広がり、壮大。いつ転落してもおかしくない崖でのトラック同士のチェイスがこの映画の見どころだ。軽薄そうなベルモンドと、いつも苦虫を噛み潰したようなヴァンチュラの対照性に、不穏なドイツ人やファム・ファタルが絡む。


■『夜の訪問者』1970│94 分│カラー│BD

監督:テレンス・ヤング 脚本:シモン・ウィンセルベルグ、アルベール・シモナン 原作:リチャード・マシスン 主演:チャールズ・ブロンソン、リヴ・ウルマン、ジェームズ・メイソン
⚫︎『雨の訪問者』と並び、ブロンソンが 1970 年にヨーロッパで撮った四本の一本。イギリス人のヤングが監督、アメリカ人のブロンソン、スウェーデン人のリヴ・ウルマンが主演、クロード・シャブロル作品で知られフランス人のジャン・ラビエが撮影を務めた国際的映画。観光客用漁船の船長が脅されて悪事に加担させられるハワード・ホークス監督作『脱出』を彷彿させる物語の中、ブロンソンが反撃アクションを魅せる。


■『仁義』1970│140 分│カラー│BD


監督・脚本:ジャン=ピエール・メルヴィル 主演:アラン・ドロン、ジャン=マリア・ヴォロンテ、ブールヴィル
⚫︎フレンチ・ノワール最大の映画作家ジャン=ピエール・メルヴィルの最後期の傑作。ヴォロンテとドロンが偶然出会い、宝石強奪を計画、モンタンを仲間に入れる。元刑事でアル中だが、誇りを取り戻すため仕事を引き受けるというモンタンの造形が素晴らしい。20分にわたる宝石店の場面は一言の台詞もなく、男たちがやるべきことをただ淡々とやっていくその描写だけで、充実した映画的時空間となっている。彼らを追い詰める警視を、コメディアンのブールヴィルが演じ、これも大当たり。

■『生き残ったものの掟』1966│100 分│カラー│35mm

監督・原作・脚本:ジョゼ・ジョヴァンニ 主演:ミシェル・コンスタンタン
⚫︎コルシカ生まれのセリ・ノワールの旗手ジョヴァンニが自身の小説を映画化した監督デビュー作。亡き友の墓参でコルシカ島を訪れたスタンは“生き残った男”の一人だった。同じ原作から作られたことから『冒険者たち』の“その後のような物語”だが、男の生き様を独特のハードなタッチで描いた本作はジョヴァンニの鮮烈なデビュー作となった。多くのノワール映画に出演している“怪優”M・コンスタンタンが主人公スタンを好演している。


■『穴』1960│132 分│モノクロ│BD

監督・脚本:ジャック・ベッケル 原作・脚本:ジョゼ・ジョヴァンニ 主演:ミシェル・コンスタンタン、ジャン・ケロディ、フィリップ・ルロワ
⚫︎ハワード・ホークスに私淑し、ジャン・ルノワールの助監督を務めたベッケルは、彼ら二人と同様、ノワールに優れた技量を発揮した。『現金に手を出すな』はフレンチ・ノワールを代表する傑作。本作はベッケルの遺作で、ジョゼ・ジョヴァンニの小説を最初の映画化した作品となる。物語の軸は、サンテ刑務所からの脱走劇。タイトル通りコンクリートの床や壁に「穴」をあける作業の描写、その透徹したカメラ、物理音の処理、淡々とした編集に映画的アクションがみなぎっている。


■『ベラクルスの男』1968│110 分│カラー│BD

監督・脚本:ジョゼ・ジョヴァンニ 原作:ジョン・カリック 主演:リノ・ヴァンチュラ
⚫︎イギリスのジョン・カリックのベストセラー「禿タカ」を映画化したジョヴァンニ・ノワール第2作。1938 年、独裁政治打倒のため反政府リーダーに雇われて中南米ベラクルスに降り立ったフランスの殺し屋“ハゲタカ”。クーデター当日、彼は独裁的な大統領を一発の銃弾で倒し、暗殺に成功する。だが、裏事情を知りすぎていたため、ハゲタカは依頼主から命を狙われる羽目になる…。フィルム・ノワールの雄リノ・ヴァンチュラの圧倒的な存在感が全編に漂う傑作ノワール。


■『賭博師ボブ』1955│100 分│モノクロ│35mm

監督・脚本・原案:ジャン=ピエール・メルヴィル 脚本:オーギュスト・ル・ブルトン 主演:ロジェ・デュシェーヌ、イザベル・コーレイ、ダニエル・コーシー
⚫︎犯罪から足を洗ったボブ、若者に優しく、女を食い物にする奴を嫌い、孤独が身に沁みついたような初老の男だが、今は賭博で身を立てている。カジノに収まる 8 億フランを狙って最後の仕事に臨むボブだが、待機中、つい始めた賭博でなぜかツキまくる…。夜のピガール地区のにぎわい、明け方の寒々しい盛り場を捉えたアンリ・ドカエのキャメラ、ぶっきらぼうに進む語りがリアルで、ケイパーものフィルム・ノワールであると同時に、ヌーヴェル・ヴァーグ前夜を感じさせる。フレンチ・ノワールの巨匠メルヴィルの初期の傑作。


■『殺られる』1959│90 分│モノクロ│BD

監督:エドゥアール・モリナロ 原作・脚本:G・モリス・デュムラン 主演:ロベール・オッセン、マガリ・ノエル、フイリップ・クレイ
⚫︎お針子たちが呼ばれたパーティ、それはブルジョアの男たちの人身売買の場だった。恋人を追ってパーティが行われる山奥の屋敷に潜入した男は、果たして彼女を救えるのか?犯人一味ながら、主人公を助けようとしたことから拷問され、ついには殺されるマガリ・ノエル、常に黒い手袋をしてスライドゲームに興じる痩せ型の殺し屋フイリップ・クレイが印象的。音楽はアート・ブレーキー・アンド・ジャズ・メッセンジャーズ。


■『乗馬練習場』1950│91 分│モノクロ│BD


監督:イヴ・アレグレ 脚本:ジャック・シギュール 主演:ベルナール・ブリエ、シモーヌ・シニョレ、ジャーヌ・マルカン
⚫︎事故で瀕死の重傷を負った妻の枕もとで彼女との思い出に浸る夫。ところが、妻の母が語る彼女の真の姿は驚くべきものだった。本作は、『デデという娼婦』『美しき小さな浜辺』に続きアレグレ監督が同じ脚本家、シニョレ主演でメガホンをとった「黒い三部作」。人間の心の闇をえぐり出すフレンチ・ノワールの系列の一翼を担った。


■『罠』1939│107 分│モノクロ│BD

監督:ロバート・シオドマク 脚本:ジャック・コンパネーズ、エルンスト・ノイバッハ 主演:モーリス・シュヴァリエ、ピエール・ルノワール、マリー・デ
⚫︎若い女性が行方不明になる事件が多発し、警察はある女性を使って囮捜査を開始。彼女はその中で知り合った陽気な男と恋仲になる。だが、その男の机に犯罪の証拠が…。映画監督として上り調子になった途端ナチスの台頭でドイツにいられなくなり、フランス、さらにアメリカに亡命、ハリウッドでノワールの代表的作家になったシオドマク監督。本作は彼がフランスで撮ったノワール。その後、これもドイツからの亡命作家ダグラス・サークによって『誘拐魔』としてアメリカでリメイクされる。


■『ビッグ・ガン』1973│112 分│カラー│BD

監督:ドウッチョ・テッサリ 原案・脚本:フランコ・ヴェルッキ 主演:主演:アラン・ドロン、リチャード・コンテ
⚫︎マフィアの殺し屋が、息子の将来のために足を洗おうとするが、組織の安泰のため彼を殺そうとしたマフィアが誤って彼の妻子を爆殺。主人公は復讐にひた走る。物語の骨格はフリッツ・ラングの『復讐は俺に任せろ』だが、それを知っているほどラストの驚きは大きい。要所要所に見られる色彩感覚や、殺しのエゲつなさに製作地のイタリアらしさがにじみ出る。ノワールの名作『他人の家』や『ゴッドファーザー』の名優リチャード・コンテにも注目。


■『墓場なき野郎ども』1960│103 分│モノクロ│BD

監督・脚本:クロード・ソーテ 脚本・原作:ジョゼ・ジョヴァンニ 主演:リノ・ヴァンチュラ、ジャン=ポール・ベルモンド
⚫︎逃亡中の死刑囚がイタリアからフランスへ。妻子連れという不利もあり、行動が荒く、行く先々に死体が積みあがる。この間のあれよあれよというスピードから一転、パリでの引きを潜める暮らしぶりは、厄介者となってしまった彼の抑圧された姿をあぶり出す。突き放したようなナレーション、ヴァンチュラのハードボイルド、かくまうベルモンドの男気。『穴』に続くジョヴァンニの原作、脚本、ギスラン・クロケのキャメラも秀逸。

『フィルム・ノワール映画祭』は4月27日(土)より新宿K’s cinemaにて開催

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