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DEC 30, 2025 インタビュー

人間の尊厳を問う衝撃作『安楽死特区』高橋伴明監督が作品に込めた思いとは?「最初は無条件に賛成の立場だったが…」

在宅医として2500人以上の看取りを経験してきた医師で作家の長尾和宏による同名小説を、名匠・高橋伴明監督(『痛くない死に方』『夜明けまでバス停で』『「桐島です」』)が映画化した衝撃作『安楽死特区』が2026年1月23日(金)より公開される。舞台は「安楽死法案」が可決された近未来の日本。国家主導で導入された“特区”制度を巡り、人間の尊厳、生と死、そして愛を問う社会派ドラマに、高橋監督が込めた思いとは?

<Synopsis> 今から数年後、欧米に倣って日本でも安楽死法案が可決した。それでも反対の声が多いため、国は実験的に「安楽死特区」を設置することに。回復の見込みがない難病を患い、余命半年と宣告されたラッパー・酒匂章太郎と、彼のパートナーでジャーナリストの藤岡歩。安楽死法に反対のふたりは、特区の実態を内部から告発することを目的に、国家戦略特区「安楽死特区」への入居を決意する。そこでふたりが見たものは、安楽死を決意した人間たちの愛と苦悩…。医師たちとの対話を通じ、ふたりの心に微細な変化が訪れる。

高橋伴明監督

主人公の章太郎役を務めるのは、『「桐島です」』(25)に続き高橋組参戦の毎熊克哉。彼のパートナー・歩役には『MADE IN JAPAN 〜こらッ!〜』『夜明けまでバス停で』など高橋組常連の大西礼芳。特区の実態を告発するために突き進む歩が、章太郎の心境の変化に直面する様は、観る者の心を激しく揺さぶる。そのほか、末期がんに苦しむ夫と、夫と心がすれ違う妻役に平田満と筒井真理子、認知症と診断され、死なせて欲しいと願う元漫才師役に余貴美子(相方役で友近が回想シーンに登場)、さらに「安楽死特区」の特命医を加藤雅也、板谷由夏、下元史朗、奥田瑛二らベテラン勢が熱演。脚本を『野獣死すべし』(80)『一度も撃ってません』(20)などの名手・丸山昇一が務め、日本映画界最高のスタッフ&キャストが顔を揃えた。

●高橋伴明監督オフィシャルインタビュー

――『安楽死特区』の企画の成り立ちを教えてください。

高橋監督:本作の製作総指揮でもある長尾和宏さんの原作の映画化は『痛くない死に方』(20)で手がけていますが、2023年夏頃に長尾さんから「小説を読んでほしい」と言われました。最初はほかの監督で進める構想だったようで、それはそれで「いいんじゃない」と思っていました(笑)。ところが「やっぱり監督してほしい」と言われ、真剣に考えるようになりました。こういう深いテーマにはベテランの脚本家が適任だと感じ、丸山昇一さんに連絡すると、「ぜひやりたい」と言ってくれ、脚本は比較的早く仕上がってきました。

主演の毎熊克哉と大西礼芳

――『「桐島です」』に続く毎熊克哉さんとのタッグになりました。

高橋監督:毎熊さんはもともと監督志望だったこともあり、映画をよく理解している俳優です。細かく説明しなくても意図をすぐに察してくれる。『「桐島です」』の現場でも演出意図を深く理解してくれていたので、彼以外には考えられませんでした。当初は両作品とも彼のスケジュールが合わず諦めかけましたが、運よく予定が合ったので、すぐにお願いしました。

『「桐島です」』(25)に続く高橋組参戦の毎熊

――安楽死は国論を二分する大きなテーマです。監督自身はどう感じていたんですか。そして撮影後に変化はありましたか?

高橋監督:最初は無条件に賛成の立場でした。自由になるなら自分で死を選べるほうが良いと思っていたからです。フランスの映画監督ジャン=リュック・ゴダールも2022年にスイスで安楽死を選びましたが、その選択はまさに私も同じ状況なら選んでいたと思います。ただ、撮影を経て周囲の人の思いを考えるようになり、その気持ちを尊重しながら進めるべきだと感じるようになりました。

安楽死と向き合う夫婦を演じた平田満と筒井真理子

――原作ではアルツハイマー型認知症と診断された女流作家、安楽死特区の主治医、末期がんで特区第1号を宣言する東京都知事らの選択が交錯しますが、映画では大きく設定を変えています。回復の見込みがない難病を患っている章太郎をラッパーにした理由は?

高橋監督:安楽死という大きなテーマに対抗するには、自分の言葉を持っている人物でないと説得力がないと考えました。特命医との面接のシーンは死の厳粛さと同時に祭事的な要素も感じられるため、ラップバトルという形を取り入れました。難しい役どころでしたが、毎熊さんは頭が良く、見事に演じきってくれました。

毎熊とシンガーソングライターのgb(ジービー)がラップを披露

――本作には伴明組の常連も多く出演しています。『赤い玉、』『痛くない死に方』の奥田瑛二さんが医師役を演じていますが、関西弁を話す設定は長尾さんをモデルにしたのでしょうか。

高橋監督:奥田さんの役は長尾さんをモデルにし、『痛くない死に方』からの流れをつなげました。同作からは余貴美子さんにも出演いただきました。余さんが三味線をやっていることは知っていたので、友近さんとの共演は面白くなると考えました。

「安楽死特区」特命医役の奥田瑛二と加藤雅也

余貴美子と友近が漫才コンビ役(回想シーン)で登場

――劇中には、晩年に自ら命を絶つ選択を公にし議論を呼んだ評論家・西部邁さんの話も登場します。

高橋監督:入水自殺をした(手が不自由な西部さんの自殺幇助をした2人は懲役2年、執行猶予3年の有罪判決となった)西部さんの壮絶さは、安楽死問題を描くうえで欠かせないと考えました。一度は外すことも考えましたが、意思を行動に移した生き様を残しておきたかったのです。

――観客にはどう受け止めてほしいですか?

高橋監督:安楽死は人間の尊厳の問題だと思います。その部分が明確にならないと答えは出せません。本人が勝手に決められることではなく、しかし、家族の意思を優先すべきものでもない。日本でも、もっと議論する場所を設けるべきだと思います。(オフィシャルインタビューより)

人生の最期を自ら決断しようとする者と、国から命じられ苦悩しながらも安楽死に導く医師、それを見守る者…一体、死とは誰のものなのか? 制度と人間、理想と現実の狭間で揺れ動く人々の姿を描き、見る者一人ひとりに、重い問いを投げかける。明日、この国で現実に起こるかもしれない世界線、観客はどう捉えるだろうか?

<Staff & Cast> 出演:毎熊克哉、大西礼芳、加藤雅也、筒井真理子、板谷由夏、下元史朗、鳥居功太郎、山﨑翠佳、海空、影山祐子、外波山文明 長尾和宏、くらんけ、友近、gb、田島令子、鈴木砂羽、平田満、余貴美子、奥田瑛二/監督:高橋伴明/原作:長尾和宏 小説「安楽死特区」ブックマン社刊/脚本:丸山昇一/製作総指揮:長尾和宏/製作:小林良二/プロデューサー:小宮亜里、高橋惠子/音楽:林祐介/撮影監督:林淳一郎/撮影:西村博光/照明:豊見山明長/録音:臼井勝/美術:黒瀧きみえ/装飾:鈴村髙正、島村篤史/ヘアメイク:佐藤泰子/スタイリスト:野中美貴/衣裳:津田大、江口久美子/VFX:立石勝/スクリプター:阿保知香子/編集:佐藤崇/助監督:毛利安孝、野本史生、稲葉博文/音楽プロデューサー:和田亨/ラインプロデューサー:藤原恵美子/制作協力:ブロウアップ/配給:渋谷プロダクション/主題歌 「Oh JOE GIWA」作詞:丸山昇一、gb 作曲編曲:林祐介/製作 「安楽死特区」製作委員会(北の丸プロダクション、渋谷プロダクション)/2025年/日本/カラー/シネマスコープ/5.1ch/日本語/129min/公式サイト:anrakushitokku.com

©「安楽死特区」製作委員会

映画『安楽死特区』は2026年1月23日(金)より新宿ピカデリーほかにて公開

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