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JUN 26, 2024 インタビューおすすめ

山崎貴監督も認めた白組・上西琢也監督渾身の短編映画『ゴジラ VS メガロ』、東宝の新レーベルから劇場公開へ!「作り手として励みになる」

東宝が新たに仕掛ける才能支援プロジェクト「GEMSTONE Creative Label」から、新進気鋭の監督たちによって創出された短編4本(上西琢也監督作『ゴジラ VS メガロ』/平瀬遼太郎監督のサイコスリラー『knot』/ちな監督の新感覚アニメーション映画『ファーストライン』/本木真武太監督のSF学園ゾンビ映画『フレイル』)が集結した『GEMNIBUS vol.1』が6月28日(金)より2週間限定で劇場公開される。

今回は、その4作の中から、『ゴジラ VS メガロ』のメガホンを執った山崎貴監督率いる白組の次期エース・上西琢也監督を単独インタビュー。ゴジラに魅せられた少年時代から、本作の制作秘話、さらには山崎監督との関係性など、思いの丈を語ってもらった。

上西琢也(監督・脚本・VFX)プロフィール/1987年生まれ。白組・CGディレクター。映画『シン・ウルトラマン』『シン・ゴジラ』『寄生獣 完結編』『ゴジラ-1.0』他ゲームやMVにも多数参加。『ゴジラVSメガロ』と同じく脚本・監督・VFXを務めたシリーズ前作『ゴジラVSガイガンレクス』は、YouTube再生回数1000万回を突破。

●メガロの領域の中で自分らしさを追求

 ――――今回、東宝さんが新たに手掛ける才能支援プロジェクト「GEMSTONE Creative Label」で、上西監督の短編映画『ゴジラVSメガロ』がシネマティック・バージョンになって6月28日(金)よりいよいよスクリーン上陸となるわけですが、この取り組みへのお気持ちをお聞かせください。

上西監督:自分の作った作品に出口があるということはとても励みになりますよね。私の場合は、東宝さんにメガロ50周年記念作品として依頼されたYouTube配信の『ゴジラ VS メガロ』という短編映画が先にあって、この支援プロジェクトからお誘いを受けたカタチになるのですが、やはり劇場にかけていただけることがとてもありがたかったです。大きいスクリーンで観る怪獣は迫力が違いますからね。

――上西監督版『ゴジラ VS メガロ』の見どころを教えていただけますか?

上西監督:メガロは数少ない昆虫怪獣なんですが、今回はシンプルにかっこいいデザインを目指して作ったので、ぜひそれを堪能していただきたいです。

――確かに洗練されたデザインでした。どの辺りを工夫したか詳しく教えてください。

上西監督:もともとある怪獣をリメイクする場合、一番気をつけなければならないのは、一目見て、ちゃんとメガロだとわかること。そこは絶対に崩してはいけないと思うので、その範囲の中で、自分らしいデザインを模索するということを心がけました。何も考えずにかっこよさを追求していくと、どんどん仮面ライダーに近づいていくので(笑)

――え、そうなんですか?新しい自分なりのスタイルを作るにしても、メガロの枠組みのなかで超えてはいけない領域があるわけですね。

上西監督:「メガロとは何か」ということを自分のなかである程度咀嚼して、絶対にはずしてはいけないものをきちんと押さえておかないとダメなんですよね。例えば、パッと観たときのシルエット。メガロはカブトムシの角があって、トンボのような目があって、触角も絶妙な垂れ具合になっているんです。最初、この触覚をアリのようにしてみたり、目をバトラのようにしてみたり、いろいろやってみたんですが、そうするとバランスが崩れてメガロでなくなってしまうんです。つまり、顔のパーツを大きく変えずに構成しないとメガロにはならない。なので今回は、頬から繋がるラインを人間でいうところの襟みたいな感じにアレンジし、本来はひと繋がりだったところをセパレートにして、小顔の造形にしています。

現代に蘇った守護神メガロが精緻かつ迫真の映像となってスクリーンに登場!

●平成VSシリーズをベースに新たなゴジラを創作

――今回のメガロは小顔なんですね。ゴジラに関してはいかがですか?

上西監督:ゴジラに関しては、平成VSシリーズ世代なので、それをベースにしながら、仕事で関わらせていただいた『シン・ゴジラ』(16)の雰囲気や、そのほかいろんなゴジラのいいところを採り入れて、バランスよくまとめたという感じですね。

――今回、特に驚いたのはゴジラの動き。CGだからこその俊敏性もあると思いますが、それだけではなく、なんとなくスーパーヒーローの動きを感じるんですが…何か参考にした作品があったりするんでしょうか?

上西監督:まず、オリジナルの『ゴジラ対メガロ』(73)、そしてVSシリーズを勉強し、ある程度ベースを作った上で、個人的に大好きなマーベル作品、特に『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』(14)のあの動きのかっこよさをどうにか入れ込むことはできないかと苦心しました。作品をご覧になってそれを感じていただけたのなら嬉しいですね。

かつてない俊敏な動きをみせるゴジラ

                   

●好きすぎてゴジラはもはや体の一部

――上西監督のキャリアパスについてもお聞きしたいのですが、まず、ゴジラシリーズを好きになったきっかけを教えてください。

上西監督:最初のきっかけは、幼稚園のとき。うちの父が出張に行って、お土産になぜかゴジラのフィギュアを買ってきてくれたんですね。それを見た僕が異常に関心を示したらしく、「そんなに好きならいろんな作品を観させてやろう」ということで、それからはもうゴジラ一色。ちょうど平成VSシリーズが始まり、ビデオで過去作も観まくりましたし、なんというか、もはやゴジラは“体の一部”という感覚でした。

――ゴジラは“体の一部”ってすごい入れ込みようですね。

上西監督:幼稚園の授業で、みんなで粘土細工をする時間があったんですが、1人だけゴジラを作っていましたからね(笑)。まだ実家にありますけど、クオリティーはパッと見てゴジラとわかるレベル。うちの親が言うには、小さいときは絵が全くダメで、丸もろくに描けない子だったらしいのですが、ゴジラを与えた瞬間、目の色が変わって、ひたすら粘土でゴジラを作っていたそうです。

――平成VSシリーズのなかでも印象に残る作品、自分のなかで大事にしている作品とかありますか? また、その理由もお聞かせください。

上西監督:もう全部ですね。『ゴジラVSビオランテ』(89)から『ゴジラVSデストロイア』(95)まで、一連の作品全てが今の自分の基礎になっているような気がします。小さいときって何かを評価したり批判したりせず、気に入ったものを素直に受け入れていく精神構造があると思うので、なぜ好きになったか理由はわかりません。何かが自分の心に刺さったんでしょうね。

――ゴジラ好きは世の中にたくさんいますが、CGクリエイターになって作り手側に行きたいと思ったのはなぜですか?

上西監督:一応、美大を出たんですが、卒業したものの希望する就職先が全くなかったんです。できれば、怪獣の着ぐるみを作れたらいいなと思っていたんですが、そんなコンテンツなど皆無に等しく、仮にあったとしても固定したメンバーで制作しているので入り込む余地がない…。あきらめて一般企業に就職したんですが、「やはりこれからはCGの時代だな」と思い直していろいろ探していたら、白組とヒューマンアカデミーさんがやっていた「白組ヒューマンスタジオ」(SNH/現在は活動休止)という専門学校があることを知って、そこで働きながら勉強することにしました。

――SNHではどんな勉強をされたのでしょう。

上西監督:最初の3ヶ月ぐらいは技術的なことをしっかり学び、その技術を活用しながら、今度は白組の作品に携り実践を積み重ねていくという感じですね。ただ、私の場合は、結構早い段階で「彼は使えるぞ」という評価をいただいたので、特にリクルートすることもなく、気付いたら白組のスタッフとして取り込まれていた、という感じで現在に至っています。

●山崎監督からもらった微妙な誉め言葉とは?

――山崎監督とはいつごろから接点があったのですか?

上西監督:山崎さんはほぼ調布のスタジオで仕事をしているんですが、ちょうど『寄生獣』(14)の前後編とBUMP OF CHICKENさんのMVを同時期に作ることになり、手が足りないということで本社にいた私がサポートに行って、そこで初めて山崎さんに会いました。そのときに仕事ぶりを結構気に入ってもらった感触があったので、後日、また調布スタジオのほうへ足を運び、お礼かたがた、「一緒に仕事させてください!」と直訴したのがきっかけで、ちょくちょく山崎さんの仕事を手伝うようになっていった感じですね。

――第96回アカデミー賞®視覚効果賞を受賞した『ゴジラ-1.0』にも上西監督は参加していますよね。白組の一員として世界で評価されたことも大きな刺激になったと思いますが、山崎監督と一緒に仕事をしたことで学んだことは何でしょう。

上西監督:技術者であり、監督でもあることの「強み」を山崎さんは示してくれたと思います。例えば、技術的に無駄な部分、必要な部分がわかるので、予算のバランスとか、組み立て方は本当に勉強になります。あとは、スタッフとのやり取りも山崎さんが技術者なので話が早いんですよね。間に入る人が少ない分、コストが下がって1カットにかける予算を上げることができるわけです。私が山崎さんにデータを送ると、山崎さんがご自分で修正してそのままダイレクトに送り返してくるので伝言ゲームがほぼないんですよね。だから、情報交換の精度もスピードも上がるわけです。

クリエイターとして『ゴジラ-1.0』にも参加
『ゴジラ-1.0』Blu-ray豪華版 4K Ultra HD Blu-ray 同梱4枚組/12,100円(税込)発売中/発売・販売元:東宝/©2023 TOHO CO., LTD.


――なるほど。監督、脚本に関してはいかがですか?

上西監督:少し前に「脚本を勉強しています」と山崎さんに相談したことがあるんですが、その時にある作品を例に挙げて、流れを見せていただきました。どういうことかというと、最初、ざっくりとしたプロットがあり、次にセリフが少し加わってロングプロットになり、そのあとどんどん突き詰めていって脚本になっていく、というプロセスを段階的に見せてもらったんですが、そこに書いてあるのは、小説的な文章ではなく、「映像」が書いてあるんです。つまり、頭の中に浮かんだ映像を文章に起こせばいいということなんですね。「これなら自分にもできるかもしれない」と思って、挑戦してみようという気持ちになりました。監督業に関しては、いろんな現場を経験して思ったのが、スタッフが優秀なら、監督は無茶を言って彼らにまかせておけば成り立つのかなと(笑)

――白組は特に精鋭部隊ですからね。

上西監督:そう思います。社内は結構ゆるい感じですが、クリエイティブに関しては一人一人が「少しでもいいもの作りたい」という向上心を持っています。見ている方向がみんな同じなので、結束力もありますし、結果も出していますからね。監督という視点から見ると、本当に心強いと思います。

――最後に、山崎さんからいただいた言葉で印象に残っているものがあれば教えてください。

上西監督:昨年の11月3日、ゴジラ・フェス2023で『ゴジラ VS メガロ』を会場でかけていただいて、山崎さんと一緒に観たんですが、終わったあと、私のほうを見て、「お前は白組の仕事をしろ」って言われたんです。

――なるほど、上西監督を離さないぞと。そういうことですね(笑)

上西監督:そうとも取れるし、「俺の作品を手伝え」という意味もあるのかな?と。いろんな含みがあって、その言葉がずっと心に残っているんです。私は誉め言葉だと受け取っていますが、どうなんでしょうね(笑)

(取材・文・写真:坂田正樹)

【GEMSTONE Creative Label】とは

「GEMSTONE Creative Label」 が目指すのは実験的で挑戦的な新しいエンタテインメントの創造。実績は関係ない。失敗してもいい。とにかく新しい”何か”を生み出す。そしてそれを全世界へ届ける。この理念に共感し、今回挑んでくれた4人の新たな才能。新しい何かを求め、もがき苦しみ、挑み続け、生み出した4つのオムニバス映画を是非、映画館で体験して頂きたい。新しい何かを生み出してきたのは、いつも新しい才能だ。私たちは、新しい才能を信じている。新時代。観よ。

■監督:上西琢也/平瀬遼太郎/ちな/本木真武太■テーマソング:Vaundy「常熱」(SDR)■製作:GEMSTONE Creative Label■配給:TOHO NEXT■公式サイト:https://gemstone.toho.co.jp/gemnibus/vol1/

Ⓒ2024 TOHO CO., LTD.

『GEMNIBUS  vol.1』は6 月 28 日(金)より TOHO シネマズ 日比谷、TOHO シネマズ 梅田にて 2 週間限定公開

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