大ヒット映画『RRR』に続き、トリウッド(テルグ語映画界)のスーパースター、NTR Jr.が主演を務めたノンストップ・マサラ・エンタテインメント最新作『デーヴァラ』がついに日本劇場公開された。メガホンを執ったのは、『ジャナタ・ガレージ』(2016)以来、NTR Jr.と2度目のタッグとなるコラターラ・シヴァ監督。「“恐怖心”をテーマに新たなヒーロー映画を作りたかった」と目を輝かせるシヴァ監督に、本作製作に至るまでの経緯、NTR Jr.起用の理由、さらにはインド映画の突き抜けた発想力について話を聞いた。

<Story>1996 年、クリケットのワールドカップを控え、厳戒態勢にあったムンバイのインド警察本部に巨大犯罪組織による破壊工作の情報が入る。特別捜査班のシヴァムは、犯罪組織のリーダーを追って“赤海”と呼ばれる南インド、アーンドラ・プラデーシュ州とタミル・ナードゥ州の州境にあるベンラトナギリという地域にやって来る。海を縄張りとする4つの集落は、航行する貨物船から積荷を密かに運ぶ密輸団の巣窟として恐れられていた。シヴァムは密輸業者に成りすまして情報を得ようとするが、長老シンガッパから、その集落で起きた凄惨な抗争事件と、赤海の英雄“デーヴァラ(NTR Jr.)”の伝説を聞くことになる。
●NTR Jr.の圧倒的「熱量」こそこの映画の生命線
――シヴァ監督自身が新たなヒーロー映画を模索していたとお聞きしましたが、本作の企画立ち上げ、脚本作り、NTR Jr.さんの主演抜擢など、製作の経緯を教えてください。
シヴァ監督:発想の源からお話すると、まず、「恐怖心」に関する映画を撮りたいと思ったのがスタートでした。何かを恐れるってネガティブに捉えられがちですが、ある程度の恐怖心や畏敬の念を持っていないと、コミュニティの中で人間は機能しないと私は思うんです。必要以上に大きな存在に動揺したり、心配したり、あるいは愛というものを信じられなくなったり…つまり、恐怖を植え付けることによって、人々は平穏な暮らしを守るために正しい行動を模索し、実践していくんじゃないかという発想ですね。

――なるほど、そういった奥深いテーマをエンタテインメントに包み込んで昇華させていく手腕は見事でした。そしてその一翼を担っているのがNTR Jr.さんでしたが、彼を主人公デーヴァラ役に抜擢した理由を教えていただけますか?
シヴァ監督:やはりポイントは「恐怖」ですね。彼の持っている圧倒的な熱量は、恐怖を植え付けるだけの強烈なインパクトがある、これが一番の決め手でした。また、南インドのかなり田舎にある村で、家父長制など古い風習が残っている場所が舞台となるため、その設定にしっくりとなじむ人、ということでも彼が適任だなと思いました。

――確かに彼の熱量がスクリーンから伝わってきました。シヴァ監督から観たNTR Jr.さんの魅力をもう少し詳しくお聞きしたいのですが、俳優としての感情的表現とダンサー、アクションスターとしての肉体的表現、この2方向から感じることを教えていただけますか?
シヴァ監督:彼は子役時代から表現力に長けていて、アクションであれ、ダンスであれ、そこにキャラクターの感情を入れ込むことを幼いころから現場を通して学んできたのだと思います。だから、とても危険なシーンでもボディダブルを使えないんです。なぜなら、感情を乗せた彼独特の肉体的表現は誰も真似ができないから。NTR Jr.という俳優は、インド映画界の中でもとてもスペシャルな存在です。事前のワークショップやリハーサルも一切不要、どんなことでも自然に、しかも容易にやってのけるので、本当に驚かされます。映画の背景やコンセプトを素早く理解し、深く考察しながら役を作り上げていく姿を見ていると、監督的資質も兼ね備えているようにも思います。彼と一緒に仕事ができて、私自身、とても光栄でした。

●「恐怖」というコンセプトから導き出した「夜の海」
――過去の大ヒット作に引けをとらない奇抜なアイデア、あるいはスペクタクルな展開は、どのようにして創作されたのでしょう。特に海での活劇は痺れました。
シヴァ監督:やはり「恐怖」を植え付けるというコンセプトが本作の根底にあるので、そこを発想の基点として考えていったら、「夜の海」が思い浮かびました。暗い海の中って怖いですよね。そこに盗んだコンテナを落として、長時間、息を止めながら拾いに行くという現実では考えられないようなことをやり遂げる屈強な男たちがいるわけですが、それを牽引するのがNTR Jr.演じるデーヴァラ。超人的行動そのものが人々に恐怖を与えますし、何より彼らが危険を顧みない恐れ知らずの存在であることを象徴しています。まるで本物の海賊のようでしたね。海のアクション、特にコンテナを使ったバトルは、俳優たちが訓練に訓練を重ねて取り組んでくれたので、本当に素晴らしいシーンになりました。

――海のシーンは、どうやって撮影したのですか?とてもリアリティがありましたが、まさか実際に深夜の海で撮ったのでは…
シヴァ監督:夜の海でアクションシーンを撮るのはさすがに無理なので、プロダクションデザイナーが、200フィート(約61m)四方の巨大なプールや数秒ながら推進することができる大型船など、とても大がかりなセットを組みました。波を人工的に起こして、そこに訓練を積んだ俳優たちが乗り込んで、体を張った演技をしているので、VFXだけでは出せない臨場感を表現することができたと思います。
――海の色がとてもリアルでした。
シヴァ監督:実は今回、日本の2つの制作会社にサポートしていただいたのですが、あの青く深い独特の海の色も、彼らの高い技術力によって生まれたものです。おっしゃるように、本物の海にしか見えませんでした。

●インドの「多様性」がもたらす大胆な発想
――毎回、インド映画を観て思うのが、その限界知らずの発想力。ありえないことをファンタジーではなく、現実世界の中で表現するその大胆さはどこから来ているのでしょう。
シヴァ監督:いい質問ですね。やはり「多様性」が影響していると思います。インドには多様な人々が住んでいて、それに比例してそれぞれ多様な感情を持っている。だから逆に、何でもありというか、全てを突き抜けた、あるいは人並み外れたキャラクターが大好きなんですね。物語的にもドラマチックでスペクタクルな展開を好むので、作り手の我々もそれに準じてどんどんエスカレートしていくわけです。多様であるがゆえに発想に制限をかけず、常に新しい試みに挑戦していく…エンタテインメントにたずさわる私たちは、日頃からそのように訓練されているのです。

――なるほど。今のことを踏まえて、零細映画も含め年間2000本前後の映画が製作されるインド映画界で、シヴァ監督やS.S.ラージャマウリ監督のように成功を収めるために、どのようなルートを歩み、どのような努力、どのような挑戦を行っているのでしょうか?
シヴァ監督:やはり純粋で、新しいもの。焼き直しではなくオリジナルなもの。ユニークであると同時に、物語が自然に、有機的に、無理なく流れて、国を問わず感情に強く訴えるドラマであることが大事ですね。そして、それらを具現化するための揺るぎない「基礎」をしっかりと構築していくこと。小手先では良い作品は生まれません。それが成功の根底にあると思います。(取材・文・写真:坂田正樹)

<Staff & Cast> 監督:コラターラ・シヴァ/出演:NTR Jr.、 ジャーンヴィー・カプール、サイフ・アリー・カーン/ 2024年/インド/172分/シネマスコープ/5.1ch/原題:Devara 字幕翻訳:藤井美佳/字幕監修:山田桂子/映倫区分:PG12/配給:ツイン/公式サイト:https://devara-movie.com

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