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NOV 16, 2023 インタビュー

品川ヒロシ監督、最新作『OUT』で “我慢する”ヤンキー映画に挑戦!「ただ暴れるだけで終わらせたくなかった」

倉悠貴醍醐虎汰朗与田祐希(乃木坂46)水上恒司、さらにはJO1の面々(與那城奨、大平祥生、金城碧海)など、若手注目スターが一堂に会した品川ヒロシ監督待望の最新作『OUT』が、11月17日(金)よりいよいよ全国公開される。

メガホンをとった品川ヒロシ監督

累計発行部数650万部を超える大人気同名ヤンキーコミック(秋田書店「ヤングチャンピオン・コミックス」刊)を実写化した本作は、2009年の品川監督長編映画デビュー作『ドロップ』にも登場した狂犬・井口達也の破天荒な後日譚を描く実録青春ムービー。“暴れまくる”から“必死に耐え抜く”新たなヤンキーワールドを作り上げた品川監督に、本作に込めた熱い思いを聞いた。

『OUT』メインキャスト

<あらすじ> かつて“狛江の狂犬”と呼ばれ、暴走族=東京狛江愚連隊の特攻隊長として君臨した伝説の超不良・井口達也(倉)が少年院を出所した。だが、保護観察付きで、次に喧嘩をしたら一発アウト。そうならないために昔の仲間と連絡を絶ち、地元から遠く離れた西千葉で、おじちゃん(杉本哲太)、おばちゃん(渡辺満里奈)が営む焼肉屋「三塁」で働く新たな生活をスタートさせた。だが、ひょんなことから千葉の暴走族=斬人(キリヒト)の副総長・安倍要(水上)と強い絆で結ばれたことから、違法薬物を売りさばく半グレ集団=爆羅漢(バクラカン)」との血で血を洗う抗争に巻き込まれる。

●「バカだけどクズじゃない」に込めた思い

――『ドロップ』公開から14年経って、井口達也の後日譚を映画にしようと思ったきっかけは何だったのでしょう?ヤンキー映画で“我慢”がテーマというところも気になります。

品川監督:『ドロップ』は、ある意味、不良に憧れる主人公・信濃川ヒロシの転生ものなんですよね。私立中学から狛江の荒れた公立中学に転校してきたヒロシが、「不良の世界ってこんな感じだったんだ…」みたいな目線で作った作品。今回は、ヒロシが転校した先にいた井口達也という暴れん坊が(原作の)主人公だったので、『ドロップ』とはまた違った目線で映画が作れると思ったんですよね。あの暴れん坊でさえ、もう少年院に戻りたくないという思いがあり、自分に愛情を注いでくれるおじちゃん、おばちゃんに迷惑をかけたくないという思いもある。ところが、別のところに居場所を移しても、やっぱり抗争に巻き込まれてしまう…。そこで“我慢”というものがテーマとして浮かび上がってきたんです。

――まさに“暴れまわる”から“耐え抜く”という新たなヤンキー映画への挑戦ですね。

品川監督:少年院から出てきた、千葉に越した、友だちができた、また喧嘩をするようになった…ではストーリーとしてどうなのかなと。ただ暴れまわっているだけの映画で終わらせたくなかったんです。

――その思いは、「バカだけどクズじゃない」というセリフにも表れていると思いますが、品川監督はこの“クズ”という言葉をどう捉えているんでしょうか?

品川監督:バカって感情だけで動いてしまうと思うんですとね。だから達也ってバカなんです。喧嘩に勝っても1円の得にもならないわけですから。でも、爆羅漢総長の一雅(宮澤祐)とかは違法薬物の売買に手を出して、単なるヤンキーを超えて、反社会的勢力に片足突っ込み始めている。つまり、需要があって金になるならクスリでも何でもさばいてやる、買った奴らがどうなろうと俺の知ったこっちゃない…というのがクズですよね。達也の場合は、間違えることもあるけれど、誰かを傷つけようと思ってやってるわけではないですから。

演出中の品川監督

――今回も、つい感情的に動いてしまってトラブルに巻き込まれるところもありますが、達也に“汚れたもの”は全く感じなかった…まさにそこですかね。

品川監督:そういう風に感じていただけたらいいなと思っていたので、それは素直に嬉しいです。

●倉悠貴×水上恒司という絶妙のキャスティング

――最初、達也役に倉悠貴さんと聞いた時は、意外性を感じたんですが、本編を拝見して納得しました。荒くれ感を出しながらも、“我慢をする達也”を見事に体現していました。

品川監督:『衝動』(21)という映画で倉くんが違法薬物の運び屋を演じていて、口の利けない女の子と恋をするんですが、それが凄くよかったんですよね。何も考えずにただ薬をコインロッカーに運ぶ青年なんですが、だんだん怒りが湧いてきて、やがて組織の上の人間に対して爆発させるという…どこか今回の達也にも通じるものがあったし、ナイーブな部分を表現するのもうまい役者さんだなと思って、彼に託すことにしました。

井口達也を演じた倉悠希

――ひょんなことから達也と友情が芽生えた斬人の副総長・安倍要を演じた水上恒司さん

も最高でした。達也とは対照的に硬派一直線、ちょっと抜けてるマッチョな不良役を渾身の演技で魅せてくれました。体の大きさ、顔つきなど、あの化け方は凄いですね。

品川監督:水上くんはとてもプロ意識が高いので、僕が何か喋ると、「なるほど!」と言いながら必死にメモをとっていたし、体作りも一緒にジムに行って一生懸命鍛えてくれたし…。髪型だけはこちらから要望を出したんですが、しゃべり方も含めて安倍要の強烈なキャラクターは水上くん自身の努力の賜物だと思います。

水上恒司×倉悠貴、名コンビ誕生!

――紅1点、斬人の5代目総長の妹・皆川千紘役の与田祐希さんも、1本筋が通っていて存在感がありました。

品川監督:与田さんって不思議な魅力があって、これだけ大勢の男性に囲まれていても、そこに存在するだけで彼女の空気にしてしまう“力”があるんですよね。ほんわかしたイメージがあると思うんですが、実は堂々としていて度胸があるんです。それが千紘という役にうまく乗れたんじゃないかなと思っています。

――あるシーンで泣けない自分が悔しくて、その悔しさで泣いてしまったということがあったそうですね。

品川監督:そうそう、まさに与田さんならではのエピソード。その瞬間、スタッフのおじさんたちはグッと気持ちを持っていかれましたから(笑)

スタッフを虜にした与田祐希

●“痛み”を感じるアクションこそ本作の真骨頂

――『ドロップ』『OUT』といえば、やはり“喧嘩シーン”が大きな見せ場となりますが、アクションに関してはどのようなイメージで臨んだのでしょうか?

品川監督:言ってみれば、ずーっと喧嘩なわけで、同じように蹴ったり殴ったりしていても面白くないと思ったので、実際の喧嘩で使わないような格闘技を盛り込んで、ヤンキーという“ファンタジーの世界”を作ってみようかなと。そうすれば、みんな思い切ってアクションができるかなと思ったので、スタントコーディネーターの富田稔さんと一緒に考えながら、僕が習っている格闘技もふんだんに入れて作り込みました。

格闘技を自ら指導する品川監督

――確かにバリエーション豊かでしたが、同時にリアリティーもありましたね。

品川監督:それはたぶん、“痛み”ですね。激しいアクションなんですが、しっかりと痛さが伝わるように心がけました。アクション専門の監督さんはやはり見映えのするシーンを作るのがうまいし、観ていて楽しいんですが、ただそこからあと一歩、「痛ぇ!」っていう感覚をどうやったら盛り込めるか。そこに凄くこだわりましたし、それがたぶん『OUT』という映画の個性になっていると思います。

――今回、JO1のメンバーもキャスティングされていますが、やはりダンスをやっていらっしゃる方々は、ポテンシャルが違いますか?

品川監督:ダンサーの人たちは、動けるのはわかっていたので、アクションに関しては全く心配していなかったです。難しいのは、今言った“痛み”の表現ですね。暴力なので、殴ったとか、殴られたとか、そういう痛みを動きの中にどう付け加えるか…。ただ、ステージも、ある意味お芝居じゃないですか。歌詞や曲に気持ちを乗せて歌うわけですから、実は、アクションしながらお芝居するって彼らにとっては特別なことではないので、めちゃめちゃうまかったと思います。

躍動するJO1メンバー

――最後に、こう考えるようになったら、俺はもう終わり、アウトだなっていうライン、品川監督の中にあったら教えてください。

品川監督:僕の場合、全部趣味の延長線だと思っているんですよ。だから、例えばゴルフが好きな人が、「朝早いからいいや」って言い出したら終わりのように、「映画を撮りたい」と思わなくなったら終わりだなと思っています。「毎日撮影するの、だるいな」とか、「脚本を書くのが面倒だな」とか、自分の中に「楽しい!」という気持ちが無くなったら…その時点でアウトですね。ちなみに、今は楽しくて楽しくてしょうがないです。(取材・文・写真:坂田正樹)

©backyard.com

配給:KADOKAWA   ©『OUT』製作委員会

映画『OUT』は11月17日(金)より全国劇場公開

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