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OCT 16, 2023 インタビュー

朝ドラ『わろてんか』から6年―― 水上京香、数々の人気ドラマで磨いた表現力で探偵映画のヒロイン役を“ニッチ”に好演!

人気ドラマを観ていると、エピソードごとに“鍵”を握るキャラクターが登場する。いわゆるゲスト出演と呼ばれるポジションだが、常に瞬発力と多彩な表現力が要求されるだけに真の実力を持った女優陣が多い。桜井ユキ、松本若菜、中村ゆりらもそのポジションで演技を磨き上げ、今や日本の映画・ドラマ界で欠かせない存在として輝きを放っている。同じ流れの中で、昨今注目しているのが水上京香27)だ。

ミステリアスな依頼人・今日子を演じた水上京香 ©backyard.com

NHK連続テレビ小説『わろてんか』(17)の英語教師役で注目を浴びたあと、『イチケイのカラス』(21)や『悪女(わる)〜働くのがカッコ悪いなんて誰が言った?〜』(22)、今年に入ってからも『転職の魔王様』『勝利の法廷式』など人気ドラマに次々と出演し、各エピソードを盛り上げる迫真の演技を披露した水上。そんな彼女が、俳優の森岡龍が初プロデュースを手掛け、『東京の恋人』の下社(しもやしろ)敦郎監督がメガホンをとった『LONESOME VACATION』(公開中)で、元カレの探偵・古谷栄一(藤江琢磨)に“父親の愛の遍歴”の調査を依頼するヒロイン・今日子を演じている。

どこか日常に物足りず、小さな冒険を求めている、フワフワつかみどころのないキャラクターに、きっと心ざわめく観客も多いはず。この表現力はゲスト出演を含めた日頃の研鑽によるものであり、今、まさにその真価が花開こうとしている。次回作『ファンファーレ』(11/17公開)では主演を務めるという水上に、本作に込めた思いとともに、女優としてもがき苦しんだ日々について話を聞いた。

●ドラマのゲスト出演は反省点ばかり

――個人的にテレビドラマをよく観る方なんですが、ゲスト出演の俳優さんの力量によって各エピソードの善し悪しが決まるところがあるなと思っていて、凄く注目しているんです。『わろてんか』で一躍世に出た水上さんも、そういう流れの中で、「いい女優さんになってきたなぁ」と思って観ていました。やはり、レギュラー出演と違って、演じる難しさはありますか?

水上:とても難しいですね。例えば5話くらいになると、撮影も半分終わっていて、座組の人間関係も出来上がっているんです。その中にゲストとして呼ばれた私が、皆さんの輪の中に入ろうと思ってもなかなかできるものではないので、とにかく「お芝居に集中しよう」という気持ちで毎回臨んでいます。あとは、ドラマの流れだけは知っておきたいので、1話から4話の中でどういう物語の展開があったのかは教えていただくようにはしています。場合によっては、数年間の波乱に満ちた人生を1話の中で集約し表現しなければならないことあるので。

©backyard.com

――役者としていろんな役を数多く演じられることに対してはいかがですか?面白さ、難しさ、両面あると思いますが、水上さんのプラスにはなっていると思いますが。

水上:プラスにはなっていると思います。ただ、いろんな役をやればやるほど、「あれで本当に良かったのかな?」とか、「こういうクセは直さないと」とか、悩むこともどんどん増えていくので、気持ちが縮こまってしまうことも結構多いんです。それこそ、デビューしたての頃の方が怖いもの知らずで、余計なことを考えずにお芝居ができていたように思います。最近は、よくないと思いながらも、反省点ばかりに気を取られている感じですね。

――伸び代がまだまだあるってことじゃないですか。プラスというより、表現者として大きな財産になっていると思いますよ。

水上:ありがとうございます。現場では、知り合いの俳優さんを見つけては、元気づけてもらいながら、なんとか踏ん張っているって感じなんですが…財産、うーん、そうですね、そう信じたいですね。

●本気のオーディションでヒロインに

――そんな水上さんに、今回、『LONESOME VACATION』のヒロイン・今日子役が巡ってきました。手前みそになりますが、自分の目に狂いはなかったなと自画自賛しています(笑)。どのような経緯で今日子を演じることになったのですか?

水上:何年か前に、私と森岡さんに共通の知り合いがいて、3人で食事に行ったことはあったんですが、お会いしたのはその一度っきり。連絡を取り合うことは全くなかったんですが、森岡さんがツイッター(現・X)で初プロデュース作品のオーディション参加者を募集していたのをたまたま見てしまい、「これ、やりたい!」ってマネージャーさんに直訴したのがきっかけです。

初プロデュースに挑戦した森岡龍と。 ©backyard.com

――え?それで今日子役に決まっちゃったんですか?

水上;いえいえ!役者の一人としてしっかりオーディションを受けて、厳正なる審査の結果、今日子役に選んでいただきました。そのあと、藤井くんが主演だと聞かされたんですが、彼とは以前から親交があったので嬉しかったですね。一度、お芝居でご一緒したいと思っていたので。

©backyard.com

●今日子は私と真逆だからこそ憧れる女性

――リーゼントヘアのロックンロール探偵というちょっとノスタルジックで破天荒な主人公ですが、脚本を読まれて、どんな印象を持たれましたか?

水上:こういうニッチな世界観って個人的には好きなんですが、演じるうえで“間”がとても大事になってくるので、自然な空気を出すのが難しいかもしれないと思いました。自分がここに入って、果たして映画が成立するのか…不安はありましたね。

――藤江さん演じる探偵の横にスーッと登場するあの入り方、絶妙でしたよ。なんとなく妖しくてフワッとしているけれど、性根が座っている感じが凛としていてかっこよかった。

水上;かっこいい女性ですよね。どこか陰があって、全てをさらけ出さない感じ。その反面、行動力があるし、自分の考えに対して素直に生きている。私自身はそういう人間ではないので、より一層憧れの気持ちが強かったです。

――憧れの女性に成り切って演じるって、気持ちいいんでしょうね。

水上:楽しかったですね。こんな風に生きられたらいいだろうなって。演じているうちに、自分なのか、今日子なのか、わからなくなる瞬間もあったんですが、私の声や体を通して彼女を表現しているので、どちらも入っていることにハッと気付いて、改めてお芝居って面白いなと思いました。

――「孤独と向き合いたくないから、仕事に打ち込んでいる」的な言葉を今日子はポツンとつぶやきますが、そこが彼女の肝なのかな…と思うと、彼女の心の中には雲がかかっていて、決して快晴ではないところも気になりました。

水上:そういうところも今日子と私は真逆なんですよね。寂しさを紛らわすためにお仕事するっていうのが、私にはちょっと理解しにくいというか、寂しいと何も手につかないタイプなので、何かで紛らわしたり、何かで埋めたりすることができないんです。今日子のように仕事に打ち込むことで切り替えられることが大人だとしたら、私はちょっと違うのかなと。そう考えると、今日子に対して憧れの気持ちは強いけれど、共感という面ではあまりなかったかもしれません。ただ、ちょっと気まぐれなところは似ているかも(笑)

――それはどういうところですか?

水上:急に感情が変わる時って、私の中でも割とあることなんですね。例えば、友達とたくさん遊んで凄く元気をもらったけれど、家に帰って今日のことを振り返っていきなり暗くなったりとか…何かきっかけがある時もあるし、もっと漠然としていることもあるし、日々いろんなことを考えながら生きているので、今日子のように、ポジティブかな?と思っていたら、突然ネガティブになったり、そういう気持ちの変化は私の中にも全然あるんです。でも、それがリアルな人間の姿だし、自分自身の中ではさまざまな理由や積み重ねがあってそういう感情の変化に繋がっているので、今日子のあのつかみどころのない変化は理解できるんです。

――今日子にはいろんな側面があって、なかなか捉えられない。だからこそ、先が読めなくて、ステレオタイプの物語には陥らない。そういうつかみどころのなさがこの映画の最大の魅力になっていますね。

水上:そうですね。どっちが良くて、どっちがダメみたいなものもないし、この先、どこに向かって走るんだろう?というワクワクもある。藤江くん演じる探偵との掛け合いも含めて、そういう曖昧でフワッとしたところを楽しんでいただけたら嬉しいですね。(取材・文・写真:坂田正樹)

水上 京香(みなかみ・きょうか):1995年生まれ、滋賀県出身。2015年「学校のカイダン」でドラマデビュー。同年、「MORSE-モールス」では初舞台でヒロインに抜擢される。主な出演作品にNHK連続テレビ小説「わろてんか」、TBS「仰げば尊し」、KTV「健康で文化的な最低限度の生活」、Netflixオリジナルシリース「金魚妻」、Amazon prime「エンジェルフライト」などがある。また、最近ではABC「朝だ!生です旅サラダ」の海外リポーターを務めるなど、映画やドラマ、舞台だけでなく多彩な活躍を見せている。主演映画『ファンファーレ』(23/吉野竜平監督)が2023年11月に公開予定。

<Story> 東京・高円寺。リーゼントで決めたちょっぴり時代遅れの私立探偵・古谷栄一(藤江)。彼のもとに、ある日突然、元カノの今日子(水上)が急逝した父親が遺した古いフィルムを持って現れる。若かりし父親の隣で幸せそうに微笑む謎の女性を探したいというのだ。フィルムの残像を手がかりに、三浦・城ヶ島を訪れた二人の、奇妙で短い調査(バカンス)が幕を開ける。

<Staff&cast> 出演:藤江琢磨、水上京香、さかたりさ、櫻井音乃、宮部純子、飯田芳、高木健、都志見久美子、松㟢翔平、森岡龍、諏訪太朗、斉藤陽一郎/監督:下社敦郎/プロデューサー:森岡龍/アソシエイト・プロデューサー:市川夕太郎/ラインプロデューサー・録音・編集:磯龍/脚本:下社敦郎・中野太/撮影:古屋幸一/照明:市川高穂/美術・スチール:上山まい/スタイリスト:矢野瞳子/ヘアメイク:征矢杏子/助監督:松㟢翔平/制作:佐久間作蔵/撮影助手:竹下亘輝/照明助手:小野塚竜矢/照明応援:白石久時/制作助手:寺村海晴/車両応援:高木健、酒川流星/8ミリパート撮影:金碩柱/ダンス振付:MIKI the FLOPPY/英語字幕:西川舜/整音・音響効果:丹雄二、丹愛/グレーディング:山田裕太(レスパスビジョン)/現像:IMAGICA/音楽:下社敦郎、中村太紀/主題歌:すばらしか/企画・製作:マイターン・エンターテイメント/制作:マイターン・エンターテイメント/SONHOUSE/配給宣伝:ムービー・アクト・プロジェクト/配給協力:ミカタ・エンタテインメント /2023/日本/カラー/68分/DCP/ヨーロピアンビスタ/ステレオ 

©️「LONESOME VACATION」製作委員会

映画『LONESOME VACATION』は10月7日(土)より新宿 K’s cinema ほか全国順次公開中

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