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JUN 30, 2023 インタビュー

花瀬琴音(『すずめの戸締り)初主演作『遠いところ』で見せた覚悟、「家族や友人と連絡を断ち切り役に臨んだ」

【バックヤードコム推薦】昨年『すずめの戸締り』への出演で話題を呼んだ女優の花瀬琴音(はなせことね/21)が、約600人のオーディションを勝ち抜き、初主演を務めた映画『遠いところ』

貧困、若年出産、家庭内暴力、少年犯罪、離婚、ひとり親、自殺、未成年飲酒、児童虐待…沖縄・コザを舞台に、幼い息子とクズ夫と暮らす17歳の少女アオイ(花瀬)が社会の過酷な現実に直面し苦悩する姿をリアルに描き、第56回カルロヴィ・ヴァリ国際映画祭 ・クリスタル・グローブ・コンペティション部門正式出品作品に選出され、Variety誌でも“「貧困にあえぐ日本の性差別を痛烈に告発する溝口健二的な現代悲劇」と激賞された。

沖縄では6月9日(金)よりすでに先行上映され、大きな話題となっているが、7月7日(金)より、いよいよ全国公開へ。劇中、歪みと規律の狭間でもがき苦しむアオイの内なる叫びを見事に体現した花瀬が、オフィシャルインタビューを通じ撮影当時を振り返った。

©2022 「遠いところ」 フィルムパートナーズ

本作は、デビュー作『アイムクレイジー』(19)で第22回富川国際ファンタスティック映画祭NETPAC賞(最優秀アジア映画賞)に輝いた工藤将亮監督の長編3作目のオリジナル作品。日本公開に先立ち、第56回カルロヴィ・ヴァリ国際映画祭で最高賞を競うコンペティション部門に日本映画として10年ぶりに正式出品され、約8分間のスタンディング・オベーションを受けた。さらに第23回東京フィルメックス・コンペティション部門観客賞受賞、第44回カイロ国際映画祭 ・インターナショナル・パノラマ部門、第53回インド国際映画祭(ゴア)シネマ・オブ・ザ・ワールド部門、ヨハネスブルグ映画祭など、海外映画祭で高く評価されている。また、アオイの友人・海音役には映画初出演となる石田夢実、夫のマサヤには『衝動』(21)の佐久間祥朗が起用され、主演の花瀬とともに撮影1ヶ月前から現地で生活し、沖縄で生まれ育った若者たちの生活感れるリアルな姿を見事に表現している。

©2022 「遠いところ」 フィルムパートナーズ

●花瀬琴音インタビュー

オーディションを経て主演が決定した花瀬は、沖縄での1ヵ月の滞在期間で一番初めに役作り取として取り組んだのは、沖縄の言葉を習得することだった。とにかく“聞く”ことを徹底し、地元の方からも沖縄出身と間違えられるほどまで上達させた彼女は、「聞き馴染みのある標準語や関西弁を一切遮断して、ラジオなどでとにかく沖縄弁をたくさん聞いてとにかく現地の方と話すことを心がけました。聞いて、口に出して、聞いて口に出して、それの繰り返しでなんとか方言を身につけました」と説明する。役作りへの徹底ぶりはそれだけに留まらない。

©2022 「遠いところ」 フィルムパートナーズ

アオイの心情に寄り添うため、「なるべく人に頼らない。助けを求めない、自分の気持ちを話さない」ように自分自身を追い込んだ。「東京で心配して連絡をくれるお母さんや友達にも、一切連絡をとりませんでした。それはアオイが後半につれて追い込まれていく中で、誰にも言えない。頼れない。助けを求められないという状況に少しでも寄り添いたかったからです」と述懐する。体当たりで臨んだ演技が世界の観客たちを魅了、高く評価された。

©2022 「遠いところ」 フィルムパートナーズ

花瀬が演じたアオイは17歳でキャバクラで働く一児の母。自分とは全く違う環境に生きるヒロインを演じるために、水商売をしながら子供を育てる人や、離婚したくてもできない人たちの話に耳を傾けた花瀬は、「『遠いところ』の台本を見て、自分の話のようだと話す方が沢山いました」と、本作が描くリアルを感じとった。そして、アオイが2歳の息子、健吾に対して抱く母としての強い愛情表現は、「それぞれの環境の中で、子供を想う母の気持ちを強く感じていました。若くても、遊びたくても、大変でも、心の真ん中にあるものは子供なんだということは、私がお話を聞いた方々が教えてくれたことでした」と彼女たちから多くのことを学び、演技の質を磨き上げていったと語っている。

©2022 「遠いところ」 フィルムパートナーズ

<Story> 沖縄県・コザ。17歳のアオイ(花瀬)は、夫のマサヤ(佐久間)と幼い息子の健吾と3人で暮らし。おばぁに健吾を預け、生活のため友達の海音(石田)と朝までキャバクラで働くアオイだったが、建築現場で働いていた夫のマサヤは不満を漏らし仕事を辞め、アオイの収入だけの生活は益々苦しくなっていく。マサヤは新たな仕事を探そうともせず、いつしかアオイへ暴力を振るうようになっていた。そんな中、キャバクラにガサ入れが入り、アオイは店で働けなくなる。

悪いことは重なり、マサヤが僅かな貯金を持ち出し、姿を消してしまう。仕方なく義母の由紀恵(松岡依都美)の家で暮らし始め、昼間の仕事を探すアオイだったがうまくいかず、さらにマサヤが暴力事件を起こし逮捕されたと連絡が入り、多額の被害者への示談金を目の前に突き付けられる。切羽詰まったアオイは、キャバクラの店長からある仕事の誘いを受ける…。

<Staff&Cast> 出演:花瀬 琴音、石田夢実、佐久間祥朗、長谷川月起、松岡依都美/監督・脚本:工藤将亮/エグゼクティブプロデューサー:古賀俊輔/プロデューサー:キタガワ ユウキ/アソシエイトプロデューサー:仲宗根 久乃/キャスティング:五藤一泰/撮影:杉村高之/照明:野村 直樹/サウンドデザイン:木原広滋、伊藤裕規/音楽:茂野雅道/美術:小林蘭/共同脚本:鈴木茉美/主題歌:“Thanks” by 唾奇/製作:Allen、ザフール  公式サイト:https://afarshore.jp

映画『遠いところ』は7月7日(金)より全国順次ロードショー(6月9日<金>より沖縄先行公開

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