<Introduction> 今年2月、華々しい作品がひしめく第73回ベルリン国際映画祭コンペティション部門で、俳優のクリステン・スチュワートら審査員たちから最高賞《金熊賞》を贈られた『アダマン号に乗って』。彼らから「人間的なものを映画的に、深いレベルで表現している」と賞賛された本作を手掛けたのは、世界的大ヒット作『ぼくの好きな先生』(02)で知られる、現代ドキュメンタリーの名匠ニコラ・フィリベール監督だ。
多様性が叫ばれる以前から、多様な存在や価値が共にあることを淡々と優しい眼差しで映し続けてきたニコラ監督に惚れ込み、20年来の交流を続けてきた配給会社ロングライドは、『人生、ただいま修行中』(18)に続き、本作の日仏共同製作として参加。そして、この輝かしい受賞と共に、ニコラ監督の強い思いと国内外での大きな反響に応え、急遽、2023年4月28日(金)に日本公開が決定した。
本作は、コンペティション部門のなかでも唯一のドキュメンタリーであり、これまで金熊賞の名誉に輝いた数少ない作品の一つ。金熊賞受賞時のスピーチでニコラ監督は、「ドキュメンタリーとフィクションを区別せずに賞を与えてくれたことに感謝している。精神疾患への人々が抱く偏見を変えたいし、生産性が無い人々に税金を使うのは無駄という風潮に抗いたい」と呼びかけた。
5年ぶりの新作の舞台は、パリの中心地・セーヌ川に浮かぶ木造建築の船。ユニークなデイケアセンター「アダマン号」。精神疾患のある人々を迎え入れ、文化活動を通じて彼らの支えとなる時間と空間を提供し、社会と再びつながりを持てるようサポートをしている。運営するのは、精神科医療の世界で起こる“質の低下”や“非人間化”の波にできる限り抵抗しようとするチームだ。患者もスタッフも区別なく、誰しもにとって生き生きと魅力的なこの場所を、監督は「奇跡」だという。そして本作でもニコラ監督は、ここにやってくる人たちに寄り添い、優しい眼差しで捉え見つめ続ける。
<Staff&Cast> 監督:ニコラ・フィリベール/2022年/フランス・日本/フランス語/109分/アメリカンビスタ/カラー/原題:Sur L’Adamant/日本語字幕:原田りえ/共同製作・配給:ロングライド/協力:ユニフランス 公式サイト:https://longride.jp/adaman/