TOP  >  プロフェッショナル・インタビュー  >  『新感染』シリーズの鬼才ヨン・サンホ、今度のゾンビはアイドル・ダンサー?!
FEB 14, 2023 インタビュー

『新感染』シリーズの鬼才ヨン・サンホ、今度のゾンビはアイドル・ダンサー?!

脚本を手掛けたヨン・サンホ

パンデミック・アクション大作『新感染 ファイナル・エクスプレス』(2016)、『新感染半島 ファイナル・ステージ』(2020)で世界を驚かせたヨン・サンホ監督が原作・脚本を手掛けた最新作『呪呪呪/死者をあやつるもの』(公開中)がついにそのベールを脱いだ。劇中に描かれる新たな超攻撃的ゾンビの正体とは?「アイドルが魅せるダンスのような一糸乱れぬ動きに注目してほしい」というヨン・サンホに、本作誕生の舞台裏を聞いた。   

本作は、黒魔術によって甦ったゾンビ集団“ジェチャウィ”に立ち向かうジャーナリストと呪術師の壮絶な戦いを描いたアクションホラー。ある夜、アパートの一室で凄惨な殺人事件が起きた。被害者の傍らには容疑者らしき死体が…しかも、なぜか死後3カ月が経過している。そんな中、超常現象が専門のジャーナリストのジニ(オム・ジウォン)が出演するラジオに、犯人を名乗る男から電話がかかってくる。  男は自分が死体を操り、被害者を殺したと告白。警察の協力のもと、ジニはある大企業の陰謀が関与していることを突き止めるが、呪いによって甦ったゾンビ集団“ジェチャウィ”の魔の手が迫る。ジニは、呪術師ソジン(チョン・ジソ)の力を借りて強大な力に立ち向かおうとするが…。

ⓒ2021 CJ ENM, CLIMAX STUDIO ALL RIGHTS RESERVED

●「脚本家」として映画作りに参加する醍醐味とは?

――本作は、原作・脚本のみを担当されていますが、メガホンをとらなかったのはなぜですか?

ヨン・サンホ:実は数年前、制作会社のスタジオドラゴン(『愛の不時着』『ミスター・サンシャイン』)から、「一度、ドラマシリーズを手掛けてみませんか?」という提案を受けたのですが、ちょうど『新幹線半島 ファイナル・ステージ』を準備していた時期だったので、演出までは難しいということで、「脚本での参加なら」ということでお引き受けしました。それが、悪霊に取り憑かれた大企業の陰謀に立ち向かうNetflixドラマ『謗法~運命を変える方法』(2020)という作品なんですが、『呪呪呪』はそのスピンオフとして作られたんです。その流れもあり、ドラマシリーズの演出を担当したキム・ヨンワン(『ファイティン!』)の方が俳優の特徴や映像の世界観もわかっているし、理解度が深いということで監督をお願いしました。

ⓒ2021 CJ ENM, CLIMAX STUDIO ALL RIGHTS RESERVED

――ドラマシリーズ全12話の脚本を執筆し、その世界観をベースに本作の物語を構築されたわけですが、映像になった作品をご覧になってどんな印象をお持ちになりましたか?

ヨン・サンホ:これまでは、私が脚本を書いて、私が演出するというカタチをずっと取ってきましたが、最近は演出をほかの監督に任せることも増えてきて、「自分の脚本をどんな作品に仕上げるのだろう?」というところに逆に“面白さ”を感じています。というのも、演出する監督それぞれの考え方が映像を通して見えてくるからです。「なるほど、こういう捉え方をしたのか…」と。やはり、脚本を書いた身として、予想外のものが映像として上がってくると本当にワクワクするというか。本作でも、“ジェチャウィ”というゾンビ集団を不思議な生き物として描いていて、凄く興味深かったです。

――“ジェチャウィ”はどんな発想から生まれたんですか?

ヨン・サンホ:今回は、ウイルスに感染して凶暴になったゾンビとは明らかに違います。どちらかというと、ブードゥー教から発祥したゾンビの原型に近いです。それと、カンフーと結合したエンタテインメント性の高い香港製のキョンシー映画を彷彿とさせるところがあるかもしれません。呪術によって動かされているという点では、ジェチャウィと似ていますからね。願わくは、キョンシーのような愛されキャラクターになれたらいいな、という思いで脚本を書きましたが…映像を観る限り、それは難しそうですね(笑)

ⓒ2021 CJ ENM, CLIMAX STUDIO ALL RIGHTS RESERVED

――動きも独特のものがありました。

ヨン・サンホ:実はキャラクターに動きをつける振り付け担当の方がいて、前作『新感染 ファイナル・エクスプレス』『新感染半島 ファイナル・ステージ』でもご一緒したのですが、私とキム・ヨンワン監督と一緒にいろいろと話し合いを重ね、最終的には“アイドルが魅せるダンス”のように一糸乱れぬパフォーマンスを撮ることができました。これにはとても満足しています。

ⓒ2021 CJ ENM, CLIMAX STUDIO ALL RIGHTS RESERVED

●撮影前の「準備」に時間をかけることの重要性

――ヨン・サンホさんの作品は、スピード感あふれるアクションもさることながら、友情だったり、家族愛だったり、あるいは社会の歪みとの闘いだったり、熱いドラマが根本にあって必ず泣かされます。そういったヒューマンな部分は意識的に描くことを心掛けているのですか?

ヨン・サンホ:ゾンビだったり、オカルトだったり、私が取り上げている題材は、どちらかというとマイナージャンルのものが多いのですが、そういったものをどうすれば一般大衆の方々にも喜んで観ていただけるのか…というところは、常々悩んでいます。そこでいろんな工夫を試みているのですが、まず一つ目は、いわゆるホラー要素の強いジャンルのものでも、怖さだけを追求するのではなく、“アクション形態”を存分に採り入れてダイナミックに観せること。そしてもう一つは、あなたがおっしゃったように、家族の話であったり、社会の問題であったり、たくさんの方々が共感できるような要素を必ず作品の中に入れ込んでいくこと。そういったことを念頭に置きながら構想するようにしています。

ⓒ2021 CJ ENM, CLIMAX STUDIO ALL RIGHTS RESERVED

――今回、ヨン・サンホさんは脚本のみの参加ですが、韓国の監督さんは、各シーンの描写も素晴らしいと思うんですが、俳優のスキルを引き出す上手さもあると思います。特に子役のレベルは、正直、日本よりも数段高いと感じました。皆さん、どのような演出をされているのですか?

ヨン・サンホ:俳優の演技にしても、アクションにしても、作品の撮影に入る前の「準備時間」が十分に取れれば、ある程度のクオリティーは出せると私は考えています。あなたがそう感じているとするなら、それは、恐らく日本に比べて韓国は、撮影に入る前のプリプロダクション(撮影前の作業)の時間をかなり長くとっているからではないかと思います。例えばアクションであれば、そのシーンをどのようにデザインし、実際にどう息を合わせるのか、どのタイミングでどんな型を取るのか、そして現場でどういう化学反応が起こり得るのか…あらゆることを徹底的に検証して撮影に備えます。

俳優たちにもプリプロダクションの期間を十分に与えて、出演する作品における自分の役柄をどう表現するかを分析させたりします。その時間をたっぷり取れれば、私たちが望んでいる演技を俳優たちから自然に引き出せるんじゃないかと思います。特に子役に関しては、準備もさることながら、より時間をかけてたくさんの子供たちと会って、その役柄に合う人物を徹底的に探します。日本にもプリプロダクションをとても大切にされている監督はたくさんいますし、そういう監督の作品に接した時は、心から感嘆します。ですから、日本映画も韓国映画も、やはり準備期間というものがとても大切だと思います。

ⓒ2021 CJ ENM, CLIMAX STUDIO ALL RIGHTS RESERVED

●片山慎三監督の『さがす』や『さまよう刃』に感嘆!

――今、日本映画の監督のお話が出ましたが、影響を受けた作品などを教えていただけますか?

ヨン・サンホ:私は韓国で生まれ育ったので、パク・チャヌク監督(『別れる決心』『お嬢さん』)やポン・ジュノ監督(『パラサイト 半地下の家族』『母なる証明』)、イ・チャンドン監督(『オアシス』『バーニング 劇場版』)といった名匠たちの作品を観ながら監督というものを夢見てきたというところはありますが、アニメ監督出身ですので、大友克洋監督(『AKIRA』『MEMORIES』)や今敏監督(『東京ゴッドファーザーズ』『パプリカ』)など、子供の頃から日本のアニメーション作品もたくさん観てきました。実写映画では、黒沢清監督の『CURE』(1997)といった作品も本当に感嘆しましたし、最近ですと、片山慎三監督の『さがす』(2022)や『さまよう刃』(2021/WOWOW)も素晴らしかったです。

――最後に今後の抱負を。ヨン・サンホ・ファンとしては、ぜひハリウッドの潤沢な予算でアクション大作を撮っていただき、ぜひ大スクリーンで観たいと思っていますがいかがでしょう。

ヨン・サンホ:実はハリウッドからいろんなお話が来ているのですが、現時点では具体的なプロジェクトは何も決まっていません。この先チャンスがあるようでしたら、もちろん挑戦してみたいなという思いはありますが、ただ、韓国で作品を作ったとしても、配信などのメディアで全世界の方々が私の作品を楽しめる時代ですから、まず、自分に与えられた目の前の作品と真摯に向き合い、一生懸命に取り組んでいくことを地道にやっていきたいと思っています。(取材・文:坂田正樹)

ⓒ2021 CJ ENM, CLIMAX STUDIO ALL RIGHTS RESERVED

2023年2月10日(金)より新宿バルト9他にて公開中!

バックヤード・コムとは

エンタメの裏側を学ぶ
ライブ・ラーニング・サイト

SNSアカウントをフォロー

TOP  >  プロフェッショナル・インタビュー  >  『新感染』シリーズの鬼才ヨン・サンホ、今度のゾンビはアイドル・ダンサー?!