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JUL 26, 2024 インタビューおすすめ

特撮映画『カミノフデ』に斎藤工、ドリカムら豪華メンバーが集結!88歳で監督デビューを果たした怪獣造形の父・村瀬継蔵が舞台裏を語る

『ゴジラ』『ガメラ』『大魔神』シリーズなど、これまで数多くの造形を手掛け、怪獣造形の礎を作ったレジェンド村瀬継蔵(むらせ・けいぞう)が、88歳にして総監督デビューを果たした特撮映画『カミノフデ 怪獣たちのいる島』が、ついに公開の日(7/26)を迎えた。CG全盛の今だからこそ、「アナログ特撮映画の素晴らしさを改めて伝えたかった」という村瀬が、映画化実現に向けての経緯、才能と才能がぶつかり合った舞台裏を語った。

怪獣造形の礎を築いた村瀬継蔵 総監督

本作は、1970年代、香港ショウ・ブラザーズ社プロデューサーの依頼を受け、村瀬自身が執筆した原案『神の筆』を、さらにブラッシュアップして映画化したオリジナル・ファンタジー。令和・平成・昭和を代表する怪獣デザイナーが集結し、俳優陣も、斎藤工、佐野史郎、釈由美子、鈴木梨央ら実力派が勢揃い。そして主題歌を「DREAMS COME TRUE」(以下、ドリカム)が提供するなど、豪華メンバーが名を連ねる。

大怪獣ヤマタノオロチ

<Story> 特殊美術造形家・時宮健三(佐野)が亡くなった。祖父・時宮の仕事にいい思い出がなかった朱莉(鈴木)は  複雑な心境で母・優子(釈)が取り仕切るファン向けのお別れ会を訪れるが、そこで時宮の古い知り合いだという謎の男・穂積(斎藤)と出会う。偶然居合わせた特撮ファンの同級生・卓也(楢原嵩琉)とともに、彼の話に耳を傾けると、祖父が映画『神の筆』を作ろうとしていたことを知らされ、小道具である筆を取り出し、「これで世界の破滅を防いでください」 という言葉を残し、閃光とともに姿を消す。気づくと二人は、映画『神の筆』の世界に入り込んでいた…。

村瀬継蔵総監督単独インタビュー

●バラエティー番組をきっかけに村瀬の脚本が日の目を見た

長い間眠っていた“秘宝(=村瀬の原案)”が、半世紀の時を経て令和に蘇った…まるで映画のような奇跡、あるいは巡り合わせによって、『カミノフデ 怪獣たちのいる島』は完成した。

「2017年だったでしょうか、私が会長を務める特殊美術造形会社『ツエニー』に某バラエティー番組の取材が入ったんですが、そのときに私が書いた『神の筆』(原案は漢字)のプロットをディレクターさんに見せたら、物凄く興味を持ってくださって。そこから一気に映像化の話が動き出したんです」と振り返る村瀬。

怪獣たちに囲まれる村瀬総監督

そもそも、香港のショウ・ブラザーズ社製作の『北京原人の逆襲』(77)に参加した際、同社のプロデューサー、チャイ・ライから、「村瀬さんが香港に来て感じたことをぜひ映画の企画にしてほしい」と熱望されたことから始まった。ところがその後、ショウ・ブラザーズ社の映画の人気が衰退し、チャイがゴールデン・ハーベスト社に移籍したことによって立ち消えになってしまった。

「最初は筆職人の話で、何か困ったことが子供たちに起こると、『神の筆』が解決してくれるという物語だったんです。ただ、40年以上前に書いた古い物語、いざ映画化するとなると、さまざまな改善点が見つかり、このままでは難しいということになって、スタッフ総動員でアイデアを出し合い、徹底的に議論しました。話し合いを続けるうちに大怪獣ヤマタノオロチが大暴れするなど、話がどんどん膨らんでいったので、最終的に『長編映画にしよう』というところに行き着いたわけです」。原案の“核(=神の筆)”を残しながら物語を大幅に変更し、かくして『カミノフデ 怪獣たちのいる島』プロジェクトは具体的に始動する。

●レジェンド・村瀬のもとに超豪華メンバーが大集結!

扇の要として、88歳にして初めて総監督というポジションについた村瀬。プロデューサー・特撮監督を『狭霧の國』(19)などの佐藤大介が務め、そのほか怪獣デザイナーとして、『仮面ライダー』『超人バロム・1』などの重鎮・高橋章、ゴジラ平成VSシリーズを多数手がけた西川信司らが集結した。

特に『ゴジラvsキングギドラ』(91)でタッグを組んだ西川が担当したヤマタノオロチは村瀬を唸らせ、「特撮ファンを歓喜させる怪獣を見事に表現してくれた」と絶賛。さらに村瀬は、「キングギドラを彷彿させながら、『大怪獣ガメラ』のように火を噴かせ、あの鋭い目は『メカゴジラの逆襲』のチタノザウルスと同じ技法で創作しました。操演は、みんなの心が一つにならないとうまくいかないので、私が講師を務めた『すかがわ特撮塾』の子供たちに手伝っていただき、フルで使わせていただきました」と述懐する。

操演が迫力を生みヤマタノオロチ

ヤマタノオロチのメイキングシーン

また、家族の絆、友情、勇気など、ヒューマンドラマの部分にも力を注ぐ本作。その軸となる俳優に関しては、斎藤工が最初にキャスティングされ、彼を基点に実力派俳優が勢揃いした。「斎藤さんが大の特撮ファンであることは知っていたので、知人を通してお声がけしたら興味を持ってくださったので、キャスティング・ディレクターに入っていただき、佐野史郎さんや釈由美子さんなど、一流の俳優さんを集めていただきました」

特撮映画ファンの斎藤工ほか実力派俳優が集結

ヒロインの鈴木梨央については、何人かの候補の中から選ばれたそうだが、「アニメ『どろろ』や主演を務めていたNHKドラマを観ていた佐藤プロデューサーから薦められオーディションで初めてお会いして、この方ならヒロインをまかせられると直感しましたね」と納得の表情を浮かべた。

ヒロインに抜擢された鈴木梨央

そして今回、最大のサプライズといえるのがドリカムの参戦!本作のために書き下ろした主題歌『Kaiju』が作品をグレードアップさせたことは言うまでもない。「ヴォーカルの吉田美和さんが私と同じ北海道池田町出身だったので、ダメもとでお願いしたら、なんと私の親戚が彼女のご家族と交流があるということもあって快くお引き受けいただきました。ベーシストの中村正人さんが特撮映画好きだったことも背中を押してくれたのかもしれません」。村瀬の人脈、村瀬の情熱、そして特撮映画のパワーが、奇跡ともいえる豪華メンバーを引き寄せた。

●不確定要素のある動きが特撮映画独特の見応えを生む

今年、山崎貴監督作品『ゴジラ-1.0』がアカデミー賞®視覚効果賞を受賞したことも記憶に新しいが、CG全盛時代の今、怪獣造形の礎を作った村瀬は、この時勢をどう感じているのだろうか?「CGと特撮は別物。だから、CGに対する偏見は全くないんです。山崎監督とトークショーでご一緒したこともありますが、『ゴジラ-1.0』から“ゴジラは強いもの”というパワーをヒシヒシと感じましたし、ドラマもわかりやすくよくできていて、CGをうまく生かした素晴らしい作品だなと思いました」と高評価。

現場の熱量が特撮映画のパワーに

それを踏まえて、あえて特撮映画の魅力を村瀬はこう力説する。「CGはパソコンなどで計算された動きは再現できますが、計算以上、あるいは計算外の動きにはならない。ところが特撮は、逆に計算できない不確定要素のある動きが多いので、画の情報量が増して、それが特撮映画独特の“見応え”になっていると思うんです。あと、現場はまさに戦いの場。才能と才能がぶつかり合って生まれる熱量が作品の活力になっているところも大きいですね」

オールドファンには懐かしさを、若い世代には新たな体験を。夏休み、88歳のレジェンドが作り上げたアナログ特撮映画『カミノフデ 怪獣たちのいる島』が世代を超えて怪獣ファンを魅了する。

(取材・文・写真:坂田正樹)

<Staff &Cast> 出演:鈴木梨央、楢原嵩琉、町田政則、馬越琢己、吉田羽花、樋口真嗣、笠井信輔、春日勇斗、釈由美子、斎藤工、佐野史郎/原作・総監督:村瀬継蔵/主題歌:DREAMS COME TRUE「Kaiju」( DCTrecords/UNIVERSAL SIGMA)/プロデューサー・特撮監督:佐藤大介/脚本:中沢健/音楽:小鷲翔太/エグゼクティブプロデューサー:村瀬直人/協力プロデューサー:八木欣也/アソシエイトプロデューサー:牛田直美/監督補:石井良和/撮影:高橋義仁、砂原洋一/照明:田村文彦/録音:飴田秀彦/音響効果:柴崎憲治/アドバイザー:勝賀瀬重憲/オリジナルコンセプトデザイン:高橋 章/怪獣デザイン:西川伸司/造形監修:村瀬継蔵/特殊造形:村瀬文継、若狭新一、松本朋大/製作:ツエニー、TSK、さんいん中央テレビ、ストリーム、ロスガトスワークス/特別協賛:ディーシーティーエンタテインメント/制作:ツエニー/制作協力:スーパービジョン/配給:ユナイテッドエンタテインメント/公式サイト:https://www.kaminofude.com/

ⓒ2024 映画「カミノフデ」製作委員会

映画『カミノフデ 怪獣たちのいる島』7月26日(金)よりTOHOシネマズ日比谷ほかにて公開

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