呪われた館『ホーンテッドマンション』はなぜ人々に愛されるのか？
創立100周年を迎えるウォルト・ディズニー・カンパニーが、ディズニーランドの人気アトラクションを実写映画化した『ホーンテッドマンション』（公開中）。恐怖と笑いのハイブリッドなストーリーと、身の毛もよだつ驚きと興奮を映画館で体験できるアトラクション感覚が本作を大ヒットへと導いているが、そもそも、999人のゴーストが棲むこの呪われた館が、なぜこんなにも人々から愛されるのか。
カリフォルニア、フロリダ、東京、そしてパリのディズニーランドに作られた「ホーンテッドマンション」は、テーマパークの中でも人気の高いアトラクション。その理由は、１つのエンターテインメントショーとして作りあげられた“綿密なストーリ“”と、”愉快なゴースト”に出会えるという唯一無二の場所であること。
本来、お化け屋敷といえば、ゲストを怖がらせる場所。つまりゲストに恐怖体験を与ることが重要視されるが、「ホーンテッドマンション」はコメディの要素に重点を置いているところがユニークだ。ただ、その要素は、冒頭からではなく、アトラクションを体験しながら徐々に感じられる構成になっている。ゲストはゴーストホストに導かれ、不気味な部屋をいくつか通り、ポルターガイストや見えないはずの霊を見た後、大勢のゴーストたちのパーティや陽気な歌を聴き、最後にはヒッチハイクゴーストが、なんと自分のドゥームバギーに乗っている！アトラクションを降りる頃には、冒頭の恐怖を忘れ、ある意味可愛らしいゴーストたちの虜になっているのだ。
の”愉快なお化け屋敷”というコンセプトの新しさに加え、ウォルト・ディズニーが「親子で一緒に楽しめる場所を作りたい」と考えてスタートしたテーマパークであることも忘れてはいけない。お化け屋敷があまりにも怖すぎると、子供は恐怖で怯えてしまい、せっかく楽しい思い出を作ったはずのディズニーランドに「2度と行きたくない！」と思ってしまうかもしれない。「ホーンテッドマンション」はディズニーランドという夢と魔法の世界にあるアトラクションであり、ディズニーの映画や様々なショーづくりを経験した才能ある素晴らしい作家、アーティストが作り上げたエンターテイメントショーだからこそ、愉快で楽しいゴーストたちが住む屋敷を訪れる多くの人々に愛される場所になったのである。
そして、映画『ホーンテッドマンション』にもこのコメディ要素がふんだんに詰め込まれている。映像のクオリティの高さが、よりリアルで不気味なゴーストを作り上げているが、アトラクションでの体験と同じように怖さもありつつ陽気で愉快なのである。映画はゴーストだけではなく、終わらない廊下（エンドレスホールウェイ）や伸びる部屋（ストレッチングルーム）、屋根裏部屋、書斎など、美術セットも完璧に再現されている。ハリエット（ティファニー・ハディッシュ）が座った動き出す椅子も、ドゥームバギーそのもの。また、おなじみの楽曲『グリム・グリニング・ゴースト』のアレンジ版も聞こえてくることで、「あのアトラクションが映画になったんだ！」と強く体感させてくれる。
おなじみのゴーストたちがどれほどたくさん登場するかはぜひ映画を見てチェックしてほしいが、“ハットボックス・ゴースト”の復活にはぜひ注目してほしい。このゴーストはアトラクションに実装するべく作られたもののアトラクション内部の照明関係やドゥームバギーの速度の関係で、効果的に使えないと判断され取り除かれていたキャラクター。彼がカムバックしたことは、「ホーンテッドマンション」のファンにとっては朗報だ。
そして、「ホーンテッドマンション」に訪れたことのある人なら、「もう1度行かなくては！」と思うはず。なぜなら、「ホーンテッドマンション」は1000人目の募集をしているため、ゲストはドゥームバギーを降りるとき、岩棚の上に乗っている小さなゴースト（リトル・レオタ）に必ずこう呼び掛けられている。「早く戻ってきて。仲間になる決心がついたら、死亡証明書を持っておいで。今ここで手続きをしてもいいのよ、あなたを死ぬほど待っているのだから」と！
かつてウォルト・ディズニーが「世界に想像力がある限り、ディズニーランドは成長し続ける」と言ったように、ホーンテッドマンションも様々な変化を遂げ、世界中で作られ、人々の前にあらわれる。こうして全世界の人々を魅了しているからこそ、ディズニー100周年記念映画『ホーンテッドマンション』は大ヒットを続けているのである。
＜Staff&Cast＞ 監督：ジャスティン・シミエン／出演：ロザリオ・ドーソン、オーウェン・ウィルソン、ティファニー・ハディッシュ、ラキース・スタンフィールド、ダニー・デヴィート、ジャレッド・レト、ジェイミー・リー・カーティス／原題：Haunted Mansion／全米公開：2023年7月28日／配給：ウォルト・ディズニー・ジャパン
