カルト教団の恐怖を軸に血湧き肉躍るエンタテインメント要素を全乗せした奇跡のB級フルコース映画『悪魔の追跡』(1975年製作)。今、半世紀の時を超えて日本に再降臨する。
<Focus Points> 1960年代後半から1970年代にかけて、アメリカン・ニュー・シネマの台頭によって、検閲を含めたスタジオ・システムは弱体化し、政治や犯罪、カルチャーなどに深く斬りこみ、バイオレンスやセックス、ホラー描写においても過激さを増し、多彩な作品が市場を賑わし始めた。そんな時代背景の中で生まれた本作『悪魔の追跡』は、カルト教団の恐怖を軸に据えながら当時のエンタテインメント要素を全てぶち込んだ“奇跡のB級映画”と謳われ、批評家たちからも「理屈抜きの快走映画」と称賛され大ヒットを記録した。
当時を振り返ってみると、『ブリット』(68)を皮切りに、『フレンチ・コネクション』(71)、『バニシング・ポイント』(71)などで繰り広げた激しいカーチェス、『エクソシスト』(73)『オーメン』(76)で火が付いたオカルトブーム、『わらの犬』(71)『ソルジャー・ブルー』(70)で暴かれた排他的な残虐性、そして『ウィッカーマン』(73/反キリスト教信者の離れ島)『サスペリア』(77/魔女崇拝のバレエ学校)で観客を震えあがらせたカルト集団の恐怖など、これまで抑圧されていたものが一気に爆発し、ドキドキ、ゾワゾワ、ブルブルするような傑作が次々と劇場を賑わせていたが、その美味しいところを全乗せし、B級エンタテイメントとして成立させたのが、まさに本作といえるだろう。
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主演を務めるのは、まさにアメリカン・ニュー。シネマの申し子ともいえる『イージーライダー』(69)『ダーティ・メリー/クレイジー・ラリー』(71)の名優ピーター・フォンダと、『ワイルドバンチ』(69)『ガルシアの首』(74)のいぶし銀ウォーレン・オーツ。メガホンをとったのは、『クレオパトラ危機突破 ダイナマイト諜報機関)『殴り込みライダー部隊』(72)などバリンバリの娯楽派監督ジャック・スターレット。全編にエネルギーがみなぎっていた70年代奇跡のエンタテインメント作品を、当時の空気感も含めて劇場で味わっていただきたい。
<Story> 楽しい休暇を過ごすために、コロラド州のスキーリゾートに向けてキャンピングカーで出発した二組の夫婦。初日、誰もいない河原で一夜を明かすことになったのだが、川の向こう岸に突然炎が燃え上がるのを目撃する。望遠鏡で確認すると、異様な覆面姿の面々が呪文を唱え、いきなり裸の女性が胸を刺された。急いでキャンピングカーを発進させたが、そこからサタニック・カルト集団に執拗に追われるはめになる…。
<Staff&Cast> 出演:ピーター・フォンダ、ウォーレン・オーツ、ロレッタ・スウィット、ララ・パーカー/監督:ジャック・スターレット/製作:ウェス・ビショップ/脚本:リー・フロスト、ウェス・ビショップ/撮影:ロバート・ジェサップ/音楽:レナード・ローゼンマン/編集監修:アラン・ジェイコブス/1975年|アメリカ映画|カラー|89分|原題:RACE WITH THE DEVIL|4Kデジタル・リマスター版/提供:キングレコード/配給:コピアポア・フィルム 公式サイト: akumarace2023.com