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SEP 16, 2022 インタビュー

西島秀俊の参戦で映画の“軸”が決まった 『グッバイ・クルエル・ワールド』監督&脚本家が語るキャスティングの妙

映画『グッバイ・クルエル・ワールド』監督&脚本家インタビュー

西島秀俊、斎藤工、三浦友和、宮沢氷魚、玉城ティナらオールスターキャストが集結した最新バイオレスムービー『グッバイ・クルエル・ワールド』(公開中)。コロナ禍の鬱屈した空気を吹き飛ばすこの痛快作をぶっ放してくれたのは、大森立嗣監督(『MOTHER マザー』『まほろ駅前多田便利軒』など)と脚本家・高田亮(『そこのみにて光輝く』『死刑にいたる病』など)の最強コンビだ。2013年、映画賞を席巻した『さよなら渓谷』以来のタッグとなる2人に、人間臭いワルたちが狂乱する本作の誕生秘話、さらには個性溢れる俳優陣の魅力について存分に語っていただいた。

映画『グッバイ・クルエル・ワールド』

あらすじ:夜の街を走る水色のフォード・サンダーバード。カーステレオから流れるゴキゲンなソウルナンバー。お互いに素性を知らない一夜限りの即席強盗団が向かう先は、寂れたラブホテル。ヤクザ組織の資金洗浄現場を“叩く”のだ。ミッションは大成功、大金を手に入れたメンバーはそれぞれの人生へと戻っていく…はずだった。だが、金の匂いに群がるクセ者たちが、黙って彼らを見過ごすはずがない。かくしてクズ同士の潰し合いが勃発する。最後に笑うのは、いったい誰だ?

●アイデアのほとんどは酒の席で生まれた?!

――この企画が立ち上がった経緯を教えていただけますか?

大森:プロデューサーの甲斐(真樹)さんとお酒を飲みながら、「そろそろ男の犯罪者がいっぱい出てくるような映画やりたいね」という話をしていたんです。ちょうど僕が『日日是好日』という茶道の映画を作っていて、甲斐さんは恋愛映画を手掛けていて、そんな時に飲む機会があって、いろいろアイデアを出し合ってたら、だんだん盛り上がっちゃって。「だったら、僕が書くよりいい脚本家に依頼したほうがいいんじゃない?」ってことで、高田のことをふと思い出したんです。

大森立嗣監督

――『さよなら渓谷』以来ですよね。その間は交流なかったんですか?

大森: 1年前くらいに企画が立ち上がりそうになったんですが、実現しなかったんですよね。だから、仕事をするのも会うのも、本当に久しぶりでした。

高田:その前に『そこのみにて光輝く』(2014)で第88回キネマ旬報ベスト・テンの脚本賞をいただいた時にお祝いしていただいたこともありましたよね。

大森:あ、そうだっけ?全然、覚えてない(笑)

高田:(笑)久々に連絡をいただいた時は嬉しかったです。「犯罪者がいっぱい出てくる男っぽいもの、やってみない?」と言われて、もう二つ返事で「やります、やります!すぐ行きます!」って感じでした(笑)

――そういう犯罪ものにも興味があったのですか?

高田:実はすごくやりたかったんです。ヤクザや半グレまでいかないようなフリーの犯罪者がプロジェクトごとに集まってやる犯罪とか、壁をぶち破って、貴金属店に入って、ガラスケースを壊して宝石盗む犯行が2000年代に流行って、それを映画でやってみたいなと、ずっと思ってたんです。

脚本家・高田亮

――アイデアもたくさん持っていたんですね。

高田:そうですね、打ち合わせの時に実録本を何冊か持って行って、例えば「金塊の強盗を装って、裏で金を取るみたいな話、どうですか?」とかいろいろ提案させていただいたんですが、「あんまり複雑になるとややこしいから、単純に強盗するって話でよくない?」という指摘を受けたので、計画はシンプルにして、お金の出どころだけ少しだけ凝ってみようと思って、マネーロンダリングを絡める感じにしました。それにしても、甲斐さん含め3人でアイデア出し合っている時は本当に盛り上がりましたよね。

大森:盛り上がったね。もう言いたいこと言って、「あとは高田くん、よろしくね」みたいな(笑)

――そうやってあの面白い脚本ができていったんですね。オープニングはファンキーなハリウッド映画のように始まり、期待感がハンパなかったです。

高田:何回目かの打ち合わせで、夕方5時くらいでしたかね、甲斐さん行きつけの渋いバーに連れて行っていただいて、そこで好きな曲かけていいって言われたので、甲斐さんがボビー・ウーマック(アメリカのソウル・シンガーライター)の『110番街交差点』をかけたんですが、「いいですね!」「オープニングはこういう感じで行こう!」みたいなノリで決まっていったと思います。※本編ではボビー・ウーマックの『What Is This』という曲が使われている。

●高田の絶妙なキャラ設定を生かす大森監督のキャスティング力

――物語も秀逸ですが、最大の魅力は、いろんな過去や人生を抱えたクセの強いキャラクター設定と、それを豪華俳優陣が思いっきり弾けて演じているところだと思います。登場人物とキャスティングをどのように決めていったか教えていただけますか?

高田:大森さんと甲斐さんが、それぞれやりたいことがいっぱいあって、「ヤクザやめた男がいてさ、若い二人が巻き込まれてさ、逃避行みたいな感じになるのもいいよね」「経験豊かな年配のワルも入れたい」と。僕は僕で宝石強盗一味を出したいとかがあって…そういう話をする中で、監督から「今の日本が見える」みたいな話にならないか」って言われたんです。広島の選挙区でお金をバラまいて当選した某夫婦議員のニュースがあった頃だったんで「そういう選挙の金を奪うとか」っていう監督のアイデアがすごいいいじゃないですかって甲斐さんと盛り上がったりしながら、三人で物語もキャラクターも練り上げていきました。

映画『グッバイ・クルエル・ワールド』

大森:でも、大きな骨格は最初からできてたよね。それに沿って肉付けとか、精度をもっと上げていこうとか、物語の展開をもっとこうしようとか、要はマイナーチェンジに時間をかけていた感じです。

高田:そうですね、肉付けの部分は監督とかなり細かく話し合いました。日本の状況をただ並べるだけでは薄っぺらいので、各キャラクターの“人間味”の部分をちゃんと描くというか。これは大森監督に言われたんですが、「人が気の抜けた状態になるところを見たい。そういう描写があると、その人物を信じられるんだ」と。その言葉が僕の中では衝撃で…ドラマを盛り上げようと思うと、どうやって感情を昂ぶらせようってことに気が行っちゃうと思うんですが、「それだけじゃつまらない。人が寝てるとか、立ちションしてるとか、人間としてそういう抜けたところがないと、何を言われても入ってこないんだよ」と。なるほどなと思いました。

――こうして生まれたキャラクターをどのようにキャスティングしていったのでしょう? せっかくなので、主要キャストだけでも一人一人、伺いましょうか。

大森:まず、西島さんの存在は本当に大きかったです。映画がとにかく大好きで、メジャーとマイナーを行き来しながら、日本の映画界を背負って立っているところがあるので、一度は組んでみたいと思っていたんですよね。だから、彼がカタギになりきれない元ヤクザ役で出てくれるとなった時点で、この映画の“軸”が決まったという感じです。

映画『グッバイ・クルエル・ワールド』西島秀俊

――西島さんが真ん中に立つと決まりますよね。その脇で政治家や上流階級に対してブツブツ悪口を言うベテラン強盗・浜田役の三浦さんも面白かった。

大森:友和さんは独特の色気がありますよね。もっと正統派の2枚目かと思ってたんですが、実際にお会いすると、物事を斜めから見るというか、不思議なリズムでお芝居してくるので驚きました。数あるキャラクターの中で、僕が思い描いていたイメージと違う感じでアプローチしてきたのは友和さんだけ。最初はあんなに口うるさいキャラじゃなくて、もっとコワモテをイメージしてたんです。ただ、打ち合わせをしていく中で、友和さんが学生運動のことをすごく調べてきて、「このセリフ、ちょっと違うんじゃない?」って言われて、内心「おい、高田ー!」とか思いながら、「そうですよねー」って同調せざるを得なくなっちゃって(笑)

映画『グッバイ・クルエル・ワールド』場面写真

高田:西島さん演じる安西に学生運動の思い出を語るシーンで、「お前、ゲバ棒を知ってるか?」とかは、台本にないセリフなんですよ。そこがすごく良くて、さすがだと思いました。

――西島さん、ガチで笑ってましたよね。斎藤工さんのロン毛の刺青男も意外性があってよかったです。

大森:工くんって骨太で体がすごく大きいんですよ。なんか、そこがいいなと思って。だって映った時に、体って嘘つかないじゃないですか。もちろん、それにプラスして刺青をつけるとか、髪の毛長くするとか、話し合っていろいろ作り込んではいきましたが。

映画『グッバイ・クルエル・ワールド』斎藤工

――狂乱ぶりもすごかったです。

大森:工くんと映画で組むのは始めてですが、昔から知っていて、僕がプロデュースして出演した『波』っていう映画の撮影現場に遊びに来たり、『ゲルマニウムの夜』を観に来てくれたりしてて。PFF(ぴあフィルムフェスティバル)の審査員も一緒にやったりしてたんです。だから本人は、「大森監督は僕を俳優として扱ってくれないんじゃないか」と思っていたらしんですが、大きな佇まいだけは「いいなぁ」と思って見ていたので(笑)、今回ご一緒できてよかったです。

――若手の宮沢氷魚さんはいかがでしょう?玉城ティナさん演じるデリヘル嬢・美流と逃避行するラブホテルの従業員・矢野役ですが、静かに淡々と壊れていく感じが逆に不気味でした。

大森:何年前だったか、TAMA映画賞授賞式の時、待ち時間がすごく長くて。そこに新進男優賞を受賞した氷魚くんもいて、隅の方で小さくなっている姿がやけに印象的だったんです。なんというか、溢れ出る気品っていうのかな。今回のように下品で難しい役をやっても、なぜか気品だけが残る。俳優さんにありがちなイキって前に出ちゃう感じが全くない。独特の雰囲気を持っていますよね。

映画『グッバイ・クルエル・ワールド』宮沢氷魚

――玉城さんも宮沢さんといいコンビネーションを魅せてくれました。

大森:彼女の魅力はなんといっても、あの大きな目。まず、あの何を考えているかわからない目に引き込まれますよね。氷魚くんとのコンビ、最高でした。

映画『グッバイ・クルエル・ワールド』宮沢氷魚&玉城ティナ

映画『グッバイ・クルエル・ワールド』宮沢氷魚&玉城ティナ

映画『グッバイ・クルエル・ワールド』宮沢氷魚&玉城ティナ

――最後に美流の恋人・武藤役の宮川大輔さん、そして弟さんでもある蜂谷刑事役の大森南朋さんについてもお伺いしていいですか?

大森:宮川さんに関しては、今回いろんなキャラクターを入れたかったので、芝居もできて面白味も出せる存在は誰かな?と思った時に、彼の顔が浮かびました。南朋に関してはまぁなんというか、(少し照れくさそうに)高田とも知り合いだし、「出てくれたらいいね」なんて話していたかもしれないですね。

高田:宮川さんは顔がメチャクチャいいですよね。特にナイフで刺された時の顔なんか最高でした。南朋さんに関してはもう完璧でしょう。あの刑事役はまさにハマリ役、わかってらっしゃると思いました。

映画『グッバイ・クルエル・ワールド』

映画『グッバイ・クルエル・ワールド』大森南朋

●ジャンルにこだわらない大森ワールドの真髄とは?

――これまで、『日日是好日』では京都のイベントに帯同させていただき、『セトウツミ』ではインタビューもさせていただき、大森監督とはいろいろご縁があるのですが、お会いするたびに作品の世界観がまったく違っているのに驚かされます。今回は、またガラリと変わってワルばかりのバイオレンス映画。その振り幅の広さにずっと興味を抱いていました。

大森:特に深く考えてるわけではないですが、『日日是好日』も『セトウツミ』も今回の作品も、単純に「自分にできそうだな」と思えたものはやるっていう感じですね。ただ、改めて振り返ってみると、これまで自分がやってきた映画に“共通するもの”はあるんですよね。それは何かというと、社会に阻害されていて漏れちゃった人とか、マスコミがなかなか扱わないような人とか、なかなか焦点が当たらないような人とか、そういう人たちに興味があるというか。今回もヤクザにもなり切れないし、社会人にもなれない中途半端な人たちを描いているわけですが、たまたまバイオレンスを作ろうと思っただけで、ジャンルに関しては全くこだわりがないんです。どちらかというと、脚本とか、原作の持っている力とかに感銘を受け、素直に自分が感じたものを映画化しているだけなので、結果、いろんなジャンルに挑戦している風に見えているのかもしれません。

映画『グッバイ・クルエル・ワールド』ポスター

――大森監督の作品は、アクションであっても、ドラマであっても、コメディーであっても“人間味”が残りますよね。

高田:そうですよね。本の直しでも、そこはすごかったです。もう何度もありましたよね。例えば、鶴見辰吾さん演じるヤクザの組員・緒方と南朋さん演じる蜂谷刑事との関係が最初軽かったんですが、「もっとあるはずだろう!」と。年月を重ねているはずだから、「ちゃんと2人の流れを作ってくれないと」みたいな指摘はたくさんありました。単に雇われているだけでは“人間味が弱い”ってことなんですよね。

大森:なんというか、“好き”と“嫌い”の狭間というか、例えば、立ちションしている後ろ姿とかね。もう立ちションしている男の背中なんて、見られている意識ゼロのどうしょうもない姿だから。ちゃんとしているところだけじゃなくて、そういう気の抜けた部分も撮りたくなっちゃうのも、人間味ってことなんでしょうね(笑)

――最後にこれから映画を観るファンの方にメッセージを。

大森:うーん、だんだん何言ってるかわかんなくなってきたけど(笑)、とにかく“浴びる”ように観てください。以上です!

(取材・文・写真:坂田正樹)

映画『グッバイ・クルエル・ワールド』は公開中

©2022『グッバイ・クルエル・ワールド』製作委員会

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