サラリーマン監督・柴口勲のもと、40名の中高生がキャスト・スタッフを務め製作したミュージカル映画『隣人のゆくえ-あの夏の歌声-』。自主映画の秀作として高い評価を経た本作の毎夏恒例の復活祭が、8月13日(土)より池袋シネマ・ロサにて開催されること決定致した。柴口監督本人よりメッセージが届いるので、ここで紹介したい。
<柴口勲監督からのメッセージ>
2017年にその自主映画は劇場公開されました。『隣人のゆくえ』は一人のサラリーマンが40名の中高生をキャスト・スタッフにして製作したミュージカル映画です。出演はもちろん、撮影も録音も歌も演奏も振付けも中高生たちが手がけています。「中高生と創った映画が各地で劇場公開された」それだけでも夢のような話でした。でもその夢には続きがありました。池袋シネマ・ロサでは翌年から毎夏のアンコール上映が続いているのです(※2020年はコロナ禍で見送り)。
なぜ、上映は続けられるのでしょう?… 決して声高に反戦を訴える映画ではありませんが、これまでは終戦記念日の週に鑑賞することに何かしらの意味があると信じてきました。ですが、今夏は想いを新たにスクリーンに投影されるのではないかと感じます。それはウクライナ戦争によって不幸にも首をもたげてきた想いです。指先でボタンを押すだけで空から落ちてくる爆弾がどれほどの悲しみを齎すのか?それがどれほどの憎しみを未来へ持ち込むのか?
『隣人のゆくえ』は小さなミュージカル映画ですが、その底には900トン弱の焼夷弾が投下された下関市街の地獄絵図があります。それは想像ではなく、空襲の生存者に取材をして知った生々しいリアルです。日本映画界のレジェンド・大林宣彦監督は「奇跡の映画を観た」と本作を評してくれました。その出どころはステージ4の癌が進行する淵で書かれた8枚の便箋に書き殴られていた文字です。そして晩年「今はもう戦後ではない。戦前です」と言っていた言葉がいま動かせない石のように私たちの眼前にあります。(監督・柴口勲)
<Introduction&Story>
戦後70周年を機に製作され、太平洋戦争時の下関空襲で焼け落ちたものの再建された梅光学院を舞台に、戦後70年を機に製作されたミュージカル仕立ての人間ドラマ。。中学1年生から高校2年生までの40人の生徒がワークショップなどを経て、出演や音楽、振り付け、撮影、録音、照明など、あらゆる制作の主体となって作品を完成させた。ある日、忘れ物を取りに学校へ戻ったカンナは、校内に響く歌声に誘われてミュージカル部が練習している部屋にたどり着く。夏休みの間、部員たちから観客としてミュージカル部に来てほしいと頼まれたカンナは、迷いながらもその部屋へ通うのだが…。
日本劇場公開:2022年 8 月 13 日(土)〜8 月 19 日(金)まで池袋シネマ・ロサにアンコール上映