ロンドン・ナショナル・ギャラリー史上唯一にして最大の盗難事件の真相を描いた実話ドラマ『ゴヤの名画と優しい泥棒』で、夫ケンプトンに代わって家計を支える献身的な妻ドロシー役を演じたヘレン・ミレン。今回届いたインタビュー映像では、映画が実話であることに触れ、本作の魅力を「くすりと笑ってもらえるわ。この映画に流れるユーモアは優しくて、思いやりの行動からにじみ出ているものだからよ。物語にも登場人物にもハマってしまうと思うわ」とアピール。
自身の役どころについては、「ドロシーはバントン家の経済を支える大黒柱なの。夢を追い続ける夫のせいで彼女の人生は苦労が多い」「現実的で地に足をつけて生きている」と説明。続けて「誰もが夢を持つし悪いことじゃないわ。でもお金がなければ電気代も払えず日々のパンも買えないでしょ。映画の冒頭では家族の経済は瀕死の状態。逼迫しているの。彼女を通して現実的な人間の声も聞いてほしいわ」と訴えた。
また、ケンプトンが訴える年金生活者の受信料無料化にも言及。「BBCは有料で、しかもテレビは貴重だった。私もテレビのない家に育ったわ。一部の家庭でしか見られなかった」と当時を振り返り、「興味深いのは昨日もニュースになっていたことね。今でも受信料の問題が取り上げられているの。ケンプトンが主張していたのとまったく同じだったわ。老齢者には無料にすべきだって今だに議論されてるのよ」と本作が現代にも繋がる話であることを強調した。
主演のジム・ブロードベントとの共演については、「私たちは老いた夫婦役だけど、長年連れ添った雰囲気が観客に伝わらないと元も子もないわ。夫婦の関係がごく自然に見えないとね。ジムが相手役だからすんなり入れたわ。全く苦労せずにね」と語り、「『インクハート』という作品で共演したくらいだったけれど、この作品で知り合え共演できたのは嬉しいわ」と再会を喜んだ。 ロジャー・ミッシェル監督の長編遺作となる本作。
ミッシェル監督作への出演は初めてだというミレンは「面白いことに気づいたんだけど、彼が描くのを得意とする人物はとても彼自身に似ているの。紳士的で優しくてユーモアがあるし、すばらしい人生哲学を持っているところなどね。現場での彼のやり方を見てそれが分かったわ」と明かし、「とにかくとても穏やかで楽しい現場で、よく笑ったしすばらしい雰囲気だったわ。ストレスは皆無だった。彼の持つ人柄が登場人物と重なって見事に融合していたと思う」と撮影を振り返った。
<ヘレン・ミレン/プロフィール>
『キャル』『英国万歳!』でカンヌ国際映画祭主演女優賞を受賞し、2006年には英国君主エリザベス女王を演じた『クィーン』でアカデミー賞主演女優賞ほか主要映画賞を多数受賞。演技派女優として活躍する一方で、『RED/レッド』シリーズでは元凄腕の殺し屋、『ワイルド・スピード』シリーズではカーアクションもこなし、御年76歳にして年齢を感じさせないパフォーマンスを見せる。
<Story>
1961年にロンドン・ナショナル・ギャラリーで実際に起きたゴヤの名画「ウェリントン公爵」盗難事件の知られざる真相を描いた本作。事件の犯人ケンプトン・バントンは、テレビに社会との繋がりを求めていた時代に、孤独な高齢者の生活を少しでも楽にしようと、盗んだ絵画の身代金で公共放送(BBC)の受信料を肩代わりしようと企てたのだ。しかし、事件にはもう一つの隠された真相が…。
映画『ゴヤの名画と優しい泥棒』は2月25日(金)よりTOHOシネマズ シャンテほか全国順次公開
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