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SEP 24, 2023 メイキング

不屈の映画監督ジャファル・パナヒ最新作『熊は、いない』 人間味あふれる“音“で紡ぐ4つの世界とは?

長編デビュー作『白い風船』(95)で第48回カンヌ国際映画祭カメラドール(新人監督賞)を受賞して以来、世界三大映画祭ほか主要映画祭にて高く評価され続けるイランの名匠ジャファル・パナヒ監督の最新作『熊は、いない』が日本公開され、その舞台裏を知るサウンドデザイナー、モハマド・レザ・デルパックから熱いメッセージと特別映像が届いた。

©2022_JP Production_all rights reserve

パナヒ監督は、市井の人々の日常を通してイラン社会の置かれたリアルな現実を描き続けているが、政府から2010年に“イラン国家の安全を脅かした罪”として20年間の映画制作禁止と出国禁止を通告された。それでも彼は、抑圧に屈せず様々な方法で映画を撮り続け、2010年以降に本作を含めた5本の長編は全て極秘に撮影。あらゆる制約を回避し自身を映画の題材にすることで、ミニマムながら工夫と発想に富んだ豊かな映画を作り続ける“世界で最も勇敢な映画監督”として知られている。

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そんな不屈の男・パナヒ監督が制作した本作は、イランの村からリモートで映画を撮影する監督役として主演を務める。撮影で滞在していたイランの小さな村で起きたあるトラブルに、監督自身が巻き込まれていくという物語だ。『熊は、いない』(英題:NO BEARS)という奇妙なタイトルが意味する“熊”とは何なのか。映画の中では、村の外にいる“熊=脅威”という意味で使われている地元の迷信だが、過去に『これは映画ではない』というタイトルの映画を作ったパナヒ。本作もイランには抑圧的な社会問題が日常的に残っていることを逆説的に語っている。

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案の定、自国イランでは上映禁止となったが、本作は見事、第79回ヴェネチア国際映画祭で審査員特別賞を獲得。日本でも第23回東京フィルメックスのオープニング作品として上映されると「圧巻の一本!」「脳裏に焼き付いて離れない」と目の肥えた映画ファンたちがこぞって絶賛。世界から称賛される注目作として、現在も日本絶賛公開中だ。

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そしてこのたび、パナヒ監督のデビュー作『⽩い⾵船』以来、全作品のサウンドデザインを⼿がけてきたモハマド・レザ・デルパックからメッセージが到着。デルパックは本作を「4つの異なる世界」と解釈し、それぞれの世界を意識して⾳作りをしたと語る。今回はその4つの世界を象徴する本編映像も併せて解禁。孤独な映画作家の世界、奇妙な⾵習が残るイランの村の世界、隣国トルコで映画撮影中のクルーたちの世界、そして映画『熊は、いない』全体の世界がそれぞれ印象的に映し出される。ぜひ、デルパックがこだわりぬいた⾳作りに注⽬しながら、本作をご覧いただきたい。

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●モハマド・レザ・デルパックからのメッセージ

パナヒ監督と初めて会ったのは、私がアッバス・キアロスタミ監督の⾳響デザイナーとして働いていた時です。彼はキアロスタミの友⼈だったので、デビュー作『⽩い⾵船』の仕事を頼まれ、私は⾳響編集、ミキシング、サウンドデザインを担当しました。それ以来、彼の全作品に携わりました。本作は、4 つの異なる世界を⾒せてくれる作品だと思います。

①映画を作ることも、脚本を書くことも、海外に⾏くことも禁じられている孤独な映画作家の世界 ②イランの国境の村に住む村⼈たちとその伝統の世界 隣国トルコで映画を撮影しているクルーの世界 ④そして、映画『熊は、いない』の世界

4 つの世界が私たちの前に広がります。この 4 つの世界を主な構成として、⾳作りをすることにしました。それぞれの世界の⾳をひとつひとつ使っていきたい。国境沿いの村の⾳、パナヒの静かな世界の⾳、監督の指⽰を遠くから撮影しようとするクルーの⾳、カメラの前で物語を演じながらも、それぞれが⾃分の⼈⽣に悩んでいる俳優たちの⾳。それぞれ異なる⾳の世界ですが、観客に区別がつかないような調和を⼼がけました。本作におけるパナヒ監督の視線は、”⼈間的な視線 “です。彼の⼈間味溢れるタッチで創られた世界の優しさを、観客はきっと感じると思います。―モハマド・レザ・デルパック (サウンドデザイナー、サウンドミックシング)

<Story> 国境付近にある⼩さな村からリモートで助監督レザに指⽰を出すパナヒ監督。偽造パスポートを使って国外逃亡しよう としている男⼥の姿をドキュメンタリードラマ映画として撮影していたのだ。さらに滞在先の村では、古いしきたりにより愛し合 うことが 許されない恋⼈たちのトラブルに監督⾃⾝が巻き込まれていく。2 組の愛し合う男⼥が迎える、想像を絶する運命とは……。 パナヒの⽬を通してイランの現状が浮き彫りになっていく。

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<Staff&Cast> 監督・脚本・製作:ジャファル・パナヒ/撮影:アミン・ジャファリ/編集:アミル・エトミナーン/サウンドデザイン:モハマド・レザ・デルパック/出演:ジャファル・パナヒ、ナセル・ハシェミ、ヴァヒド・モバセリ、バクティアール・パンジェイ、ミナ・カヴァニ・ナルジェス・デララム、レザ・ヘイダリ/2022 年/イラン/ペルシア語・アゼリー語・トルコ語/107 分/カラー/ビスタ/5.1ch/英題:NO BEARS/⽇本語字幕:⼤⻄公⼦/字幕監修:ショーレ・ゴルパリアン/配給:アンプラグド

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映画『熊は、いない』は新宿武蔵野館ほかにて絶賛公開中

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