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NOV 04, 2024 イベント

『ホワイトバード』マーク・フォースター監督が語りかける現代に欠如した本当の「優しさ」とは?【第37回東京国際映画祭】

マーク・フォースター監督とレネ・ウルフ(エグゼクティブ・プロデューサー)

世界的大ヒット作『ワンダー 君は太陽』の原作者R・J・パラシオが、「ワンダー」のアナザーストーリーとして書き上げた小説を映画化した『ホワイトバード はじまりのワンダー』が 12 月 6 日(金)より全国公開される。これに先立ち、第37回東京国際映画祭にてジャパンプレミアが行われ、メガホンをとったマーク・フォースター監督(『ワールド・ウォーZ』『オットーという男』)とエグゼクティブ・プロデューサーを務めたレネ・ウルフが来日、本編上映後のQ&Aに出席した。

<Story> イジメによって学校を退学処分になったジュリアン(ブライス・ガイザー)は、自分の居場所を見失っていた。そんな中、ジュリアンの祖母のサラ(ヘレン・ミレン)がパリから訪ねて来る。あの経験で学んだことは、「人に意地悪もやさしくもない、ただ普通に接することだ」と孫の口から聞いたサラは、「あなたのために話すべきね」と自らの少女時代を明かす。時は1942年、ナチス占領下のフランスで、ユダヤ人であるサラ(アリエラ・グレイザー)と彼女の両親に危険が近づいていた。サラの学校にナチスが押し寄せ、ユダヤ人生徒を連行するが、サラは同じクラスのジュリアンに助けられ、彼の家の納屋に匿われることになる。クラスでいじめられていたジュリアン(オーランド・シュワート)に何の関心も払わず、名前すら知らなかったサラを、ジュリアンと彼の両親は命がけで守ってくれる。日に日に二人の絆が深まる中、終戦が近いというニュースが流れるのだが──。

孫のジュリアン(ブライス・ガイザー)に過去の出来事を話す祖母サラ(ヘレン・ミレン)

映画の上映後、温かな拍手に包まれた会場内。その様子を目の当たりにしたフォースター監督は、「日本の皆さんは私の作品をいつも温かく受け入れてくださいます。ですから、本日上映をしていただいてとてもうれしいですし、日本でもこれから劇場公開が始まりますので。ぜひともお友だちにもお声がけしていただいて、たくさんの方に観ていただきたいと思います」と会場に呼びかける。続いてウルフも「やはり私たち、映画をつくるものとしては、こうやって皆さんが観ていただけるからこそやりがいがある。いつもそう思っています。これから日本でも公開が始まりますが、これはいろいろな世代の方に観ていただきたい作品なので、ご家族はもちろん、お友だちなど、いろんな世代の方と一緒に、また足を運んでいただけたら」と呼びかけた。

マーク・フォーレスター監督

人を思いやる勇気や、大きな愛について描かれた本作。「この映画で伝えたかったメッセージは?」という質問に、「実はこの映画の公開のタイミングについては、二人でいろいろと話しをしたんですが、まさに今のこの時期だからこそうまくシンクロできたように思うんです」と切り出したウルフ。実際は 2 年前に公開しようと準備を進めていたものの、ちょうど時期的にハリウッドの脚本家ストライキと重なってしまい、2 年前に公開することはできなかったという。

「その時は残念だなと思っていましたが、逆に 2 年遅れとなった今の時代だからこそ、優しさの意味を考えさせられるような作品になった。だからいいタイミングだったなと思います」と語る。続いてフォースター監督も、「確かにこの映画は、戦争という時代背景の中で描かれる“優しさ”だったり“愛”の物語なのですが、私たちが映画をつくっていた時は戦争が起きていなかった。でも今はいろいろなところで争いや戦争が起こっています。その中で優しさとはどういうことなのか、人間同士は信じ合わないといけないし、対話があれば問題は解決できるのではないかという希望を持つことなど、こんな時代だからこそ、なおさら物語を通じてそのことを感じてもらいたい」とその思いを語った。

奇しくもフォースター監督が本作の原作を読んだのは2020年3月。新型コロナによるロックダウンのために、外出もままならなかった時期。本作の主人公サラが納屋に隠れている状況に自身を重ねていたという。「この物語に共感したのは、自分たちもコロナ禍で外に出られなかったということもあります。私はあまり泣くことはないんですが、サラの気持ちがものすごく理解できて。最後の方は感情移入してしまい本当に泣いてしまいました。過去に泣いたのは(2004年にフォースター監督がジョニー・デップ主演でメガホンをとった)『ネバーランド』以来でした。そこから二人で脚本を考えていかないといけないね、ということでいろいろと考えて。半年後にスタートすることになりました」。

絶賛されたジュリアン役のオーランド・シュワートと、若き日のサラ役を演じたアリエラ・グレイザー

客席からは、アリエラ・グレイザー演じるサラと、オーランド・シュワート演じるジュリアンという若き2人のキャスティングを称賛するコメントも。そのキャスティングについて質問されたフォースター監督は、「実はコロナ禍だったので、はじめてZoomでのオーディションを行ったんです。ただ二人は同じ部屋にいるわけではなく、分割された画面に映っているわけなんですよね。そこで二人にセリフを読んでもらって。画面上ではふたりの十分な化学反応を感じたし、パーフェクトだと思った。でも実際に現場に来たらどうだろうか、という心配がありました」と正直な思いを吐露。だがフォースター監督が Zoom の画面で感じたふたりの化学反応は、実際にプラハで二人に会った時も期待通りに演技をしてくれたとのことで、「心配することはなかった」という。

当時15歳だったオーランドは現場にスマホを持ち込むことがなかったそうで、「オーランドは 15歳の青年ですよ。若い子が現場にスマホを持ち込まないなんてありえないと思ったんですよ。でも彼は集中したいからと言ってそうした。それが彼のスペシャルな部分だと思いました。二人ともこの物語の時代背景のリサーチをたくさんしてくれて、自分たちなりに作品を理解しようとしてくれました」と満足げ。ウルフも「やはりパンデミック中だったということで、普通なら映画が終わると、友だちに会ったり、どこかに出かけたりということがあると思うんですが、この時はどこにも出かけられなくて。二人でいることも多かったので、二人の関係性が通じ合っていたんじゃないかなと思います」と振り返った。

会場には主人公たちと同世代の 15 歳だという女性客から「私たちの世代に向けて言いたいことは?」という質問も。それに対して「いい質問だね」とニッコリ笑ったフォースター監督は、「やはり今の時代の若い皆さんにお話をするならば、この映画の主人公も最初は人に気付いてもらいたくない。人に見てもらいたくないと避けているところがあったんです。あと、やはりこれは社会現象だと思いますけど、いじめもテーマになっています。サラ自身も、ジュリアンの優しさに気付いて、変わっていくというところがありますが、人間は優しさや希望によって変わっていくことができる。そこは皆さんにも感じとってもらいたいし、もしも学校でいじめがあった時は、その人を助けるために手を差し伸べていただきたいなと思います」と語った。続けてウルフも「小さいことでもいいから、正しいと思ったことはやるべき。自分が正しいと思ってやることは、それが優しさとなって倍増していく。それが光となり、希望になっていくと思います」と若者に向けたメッセージを送った。

<Staff & Cast> 監督:マーク・フォースター/脚本:マーク・ボムバック、R.J.パラシオ/出演:アリエラ・グレイザー、オーランド・シュワート、ブライス・ガイザー、ジリアン・アンダーソン、ヘレン・ミレン/2024年|アメリカ|英語・仏語|121分|カラー|スコープ|5.1ch|原題:White Bird|字幕翻訳:稲田嵯裕里|映倫区分:G/配給:キノフィルムズ  公式サイト:https://whitebird-movie.jp

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映画『ホワイトバード はじまりのワンダー』は12月6日(金)よりTOHOシネマズ シャンテ他にて全国公開


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