“1分間で最強を決める”という斬新なコンセプトでこれまでの常識を壊し、熱狂的な支持を受けてきた格闘技イベント「BreakingDown/ブレイキングダウン」。その仕掛け人である格闘家・朝倉未来と起業家・溝口勇児が、遂に映画に殴り込む!
『クローズZERO』シリーズの大ファンを公言する朝倉から熱いラブコールを受けた三池崇史監督が、最新作『BLUE FIGHT ~蒼き若者たちのブレイキングダウン~』(1/31公開)で19年ぶりに不良バトル映画に挑む。「久々に我を忘れて夢中で撮った」という三池監督に、朝倉をはじめ熱い男たちの魂がぶつかり合う制作の舞台裏、そして本作のグレードをさらに引き上げたGACKTの存在感について話を聞いた。
<Story> 少年院で知り合い、親友になったイクト(木下暖日/きのした・だんひ)とリョーマ(吉澤要人/よしざわ・かなめ)。ある日、院を訪れた朝倉未来のスピーチに感銘を受けた二人は、「BreakingDown /ブレイキングダウン」出場という夢を追い始める。だが、因縁のライバルの登場により、予期せぬ抗争に巻き込まれてゆく。果たして彼らは、新しい人生に踏み出すことができるのか。
●朝倉未来の熱量にオリジナルビデオ時代を思い出した
――朝倉さんたちから熱烈なオファーをいただいたそうですが、メガホンをとることを決断した最大の決め手は何だったのでしょう。
三池監督:「THE OUTSIDER」や「RIZIN 」(RIZIN FIGHTING FEDERATION)のころから格闘技ファンとして注目していましたし、「BreakingDown/ブレイキングダウン」も面白い試みだなと思って観ていました。彼らは分をわきまえながらイベントを徐々に拡張している集団ですよね。そんなに大きな興行を打つわけじゃない。ネットで支持を集め、オーディションで面白いキャラクターを集めてリングに上げる。戦った人間たちにも見返りがあり、ビジネスとしてちゃんと成立させている。
そんな中、映画という分野も1つのリングというか、自分たちがまだ開拓していない戦いの場として捉えているのだと思います。 これは僕の勝手な推測ですが、今回オファーしてきたのは、おそらく自分たちが観たい映画がなかなか生まれてこないっていう苛立ちもあったのかなと。「観たい映画を作りたい!」という “ 純粋な衝動”をすごく感じられたので一緒にやってみたいという思いに駆られました。
――実際に朝倉さんたちとお会いして、どんな印象を受けましたか?
三池監督:僕にオファーするくらいだから、映画興行のリスクとか、ある程度はリサーチしていると思っていたんですが、会って話をしてみると、きちんと市場を分析して、「うまくやろう」なんてことは全く考えていなくて、「自分たちでお金を集めて、自分たちのやりたいことをやるんだ」という熱量がものすごかったです。僕なんか普段は職業映画監督としてやっているから、新鮮というか、面白いというか、どこか懐かしさも感じたんですよね。
――懐かしさというのはどういったところに感じたのですか?
三池監督:実はオリジナルビデオの頃も似たようなケースはあったんです。ローバジェットのオリジナルビデオなら4000万円ぐらいで作れるから、かつて映画を志したんだけど家業を継ぐためにやめた人とか、夢をあきらめて堅実な仕事に就いて事業が成功した人とか、自分でお金を出して、プロデュースして、自分が観たい映画を作る人たちが結構いたんですよ、そういう冒険をする人たちと一緒に仕事をすると、すごく面白かったので、今回も監督という立場で参加しながら、あのワクワクするような気持ちをもう一度味わってみたいと思ったんです。
●ラスボス“GACKT”は唯一無二の存在
――総勢2,000人の中からオーディションで新人の木下暖日さんと吉澤要人さんが選ばれましたが、決め手となったポイントはどこだったのでしょう。
三池監督:暖日くんは、オーディションに来た時は高校生でしたね。3ヶ月前に一応事務所に所属したらしいですが、野球ばかりやっていて、演技に関しては全くの未経験。オーディションで初めて台本を読んだらしいのですが、それがいいんですよ。度胸があるのか、鈍感なのか、本人はもしかして緊張していたかも知れないけれど、物怖じせず堂々としていました。感情表現とか全くわからないから、変な小芝居をしないところもよかったです。
――吉澤さんは演じることにちょっと慣れている感じがしましたね。
三池監督:吉澤くんは事務所に所属して、演技のお仕事をしたり、アイドル活動をしたり、いろんな現場を観てきているので、全てにおいて暖日くんよりもやりたいことが具体的かつ堅実で安心感がありましたね。対照的な二人なので、いいコンビになるなと思いました。
――ラスボスのGACKTさんが登場した時はテンションが上がりました。出演交渉はスムーズにいったのでしょうか。
三池監督:たぶん無理だろうなと思いながらも、声だけでもかけてみようということでオファーを出しました。ただ、彼は映画で食べているわけではないし、プロの役者という意識もないと思うので、いったい何が心に響くのか正直わからなかったですね。やはりやるからには何か自分が楽しめる要素がないとダメなんだろうなと思っていたら、ある日、「この企画に興味をもってくれたらしい」という声が届いてきて…。スケジュール的にも切羽詰まっていた僕ら制作チームは、これから彼のところに押しかけて、帰る頃には「やります!」って言ってもらわないと間に合わないという状況だったので、必死に口説いたんですが、「がんばってやってみます」という言葉を聞いた時は嬉しかったですね。僕らからすると、 全く違う嗅覚を持って、全く違う生き方をしているGACKTさんが、この役に興味を持っていただいただけでも夢のようでしたから。
――GACKTさんの存在は観る者を釘付けにしますよね。
三池監督:ほかに代わりはいない、唯一無二の存在です。彼が出てくるだけで作品の空気を変えてしまうというか、ありえない世界をありにしてしまう。でもそれは演技じゃないんです、 ずっとGACKT、いつ会ってもあのまんま。たぶん寝てる時もGACKTなんでしょうね(笑)。肉体の鍛錬もすごいし、本当にストイックな人だと思います。
●『クローズZERO』にはない純粋な衝動
――『クローズZERO』シリーズで新時代の不良バトルジャンルを開拓した三池監督にとって久々の同系映画。通ずるところ、あるいは進化したところなど、何か感じるものがあったでしょうか?
三池監督:まず、作られ方が全く逆なんですよね。『クローズZERO』は映画というより、やっぱり漫画ありき。「鈴蘭のあの世代はあいつがいいよね」とか、「鳳仙のあいつ、かっこいいよな」とか、漫画ファンのキャラクター推しが強く、その不良キャラクターを人気俳優たちが演じることで話題が広がり、しかもそれが全国公開されるということでヒットしました。
対して本作は、まず漫画原作がないし、主演は新人。『クローズZERO』みたいなものをまた作ろうと思ってもそれは無理だし、そもそもまた同じことをやる意味がない。もちろんたくさんの方に観ていただきたいですが、当てるためだけに作っているわけではなく、「この映画は自分にとってどういう価値があるんだろう?」…なんていう考えも不純物。しいて言えば、朝倉さんではないですが、“純粋な衝動”ですかね。自分のことなんてどうでもいい、とにかく久々に我を忘れて夢中で撮った作品です。
(取材・文・写真:坂田正樹)
<Staff & Cast> 出演:⽊下暖⽇、吉澤要⼈、篠⽥⿇⾥⼦、⼟屋アンナ、久遠 親、やべきょうすけ、⼀ノ瀬ワタル、加藤⼩夏、仲野 温、カルマ、中⼭翔貴、せーや、真⽥理希、⼤平修蔵、⽥中美久、⾦⼦ノブアキ、寺島 進、⾼橋克典、GACKT/監督:三池崇史/脚本:樹林伸/音楽:遠藤浩二/原作:樹林伸、YOAKE FILM/エグゼクティブプロデューサー:朝倉未来、溝口勇児/チーフプロデューサー:丹羽多聞アンドリウ/プロデューサー:坂美佐子、前田茂司/撮影:北信康(J.S.C.)/照明:柴田雄大/録音:中村淳/美術:坂本朗/装飾・小道具:前田陽、伊藤実穂/編集:相良直一郎/キャラクタースーパーバイザー:前田勇弥/スタントコーディネーター:辻井啓伺、出口正義/アクション指導:矢部享祐/キャスティングプロデューサー:山口正志、平出千尋/キャスティングスーパーバイザー: 柿崎ゆうじ/SNSプロデューサー:秦健一郎/ラインプロデューサー:今井朝幸、奥野邦洋、土川はな/助監督:倉橋龍介/制作担当:青山右京/製作:YOAKE FILM、BACKSTAGE/制作プロダクション:OLM/制作協力:楽映舎/配給:ギャガ 、YOAKE FILM 映画公式サイト:bluefight.jp ※矢部享祐の「祐」は旧漢字の「示」へん
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