映画『パラサイト 半地下の家族』(19)で米アカデミー賞作品賞・監督賞・脚本賞・国際長編映画賞の4冠を達成した巨匠ポン・ジュノ監督の助監督として研鑽を積み、長編映画デビュー作『岬の兄妹』(18)で日本映画界に衝撃を与えた片山慎三監督。続く『さがす』(22)、配信ドラマ「ガンニバル」(23)でも、目が離せないセンセーショナルな展開で観る者を釘付けにした。
まさに映画界の寵児・片山監督がぶちかました最新作『雨の中の慾情』(11/29より公開中)がこれまた挑戦的で凄まじい。たぶんご本人は織り込み済みかと予想するが、各映画サイトのレビューでは極端なほど賛否の嵐が吹きまくっている。正直、この映画を論理立て、わかったようなことを書く気もなければ、書く勇気もない。自分の目に飛び込んでくる狂乱世界にただ慌てふためき、翻弄される心の状態を書き記すしかもはや術がない。
今回、片山監督が挑んだのは、今年デビュー70周年を迎えた伝説の漫画家・つげ義春(代表作:「ねじ式」「無能の人」)の短編「雨の中の慾情」の実写映画化。絵コンテのまま発表されたつげ義春ならではのシュルレアリスム作品をベースに独創性溢れる数奇なラブストーリーを生み出した。
その担い手として託されたのが、成田凌、中村映里子、森田剛の実力派俳優だ。独特の間合いと存在感で唯一無二の色を発光する成田、自身の全てをさらけ出し作品に心血を注ぐ中村、そして元スーパーアイドルとは思えないいぶし銀の役者魂で正体の掴めぬ男を怪演した森田。夢と想像と現実(現実?そんなもの、あるのか?)のあやふやな世界のなかで、3人が交わっては別れ、傷つき、そして再会し、意識の下に閉じ込められている無意識の欲望をあぶり出す。
また、本作は2023年3月に劇中のほとんどのシーンを台湾中部の嘉義市にて撮影。昭和初期の日本を感じさせるレトロな町並みが醸し出す妖しい映像世界も本作の大きな魅力の一つとなっている。
雷雨のなかの衝撃的なオープニングシークエンスから始まる不可解な描写。その全てが伏線となって連なり、本編を観終わるころには、心は迷路、なのに狂おしいほどに切実な感情に支配されている…この映画体験が吉と出るか、凶と出るか、それはまさに、あなた次第だ。
<Story> 貧しい北町に住む売れない漫画家・義男(成田)。アパート経営の他に怪しい商売をしているらしい大家の尾弥次(竹中)から自称小説家の伊守(森田)とともに引っ越しの手伝いに駆り出され、離婚したばかりの福子(中村)と出会う。艶めかしい魅力をたたえた福子に心奪われた義男だが、どうやら福子にはすでに付き合っている人がいるらしい。伊守は自作の小説を掲載するため、怪しげな出版社員とともに富める南町で流行っているPR誌を真似て北町のPR誌を企画する。その広告営業を手伝わされる義男。ほどなく、福子と伊守が義男の家に転がり込んできて、義男は福子への潰えぬ想いを抱えたたま、三人の奇妙な共同生活が始まる。
<Staff & Cast> 出演:成田凌、中村映里子、森田剛、足立智充、中西柚貴、松浦祐也、梁秩誠、李沐薰、伊島空李杏、竹中直人監督・脚本:片山慎三 原作:つげ義春「雨の中の慾情」/企画:中沢敏明/エグゼクティブプロデューサー:英田理志、中西一雄、林之晨、鶴丸智康、プロデューサー:厨子健介 筒井史子 劉士華/コ・プロデューサー:後藤哲、李芃君、川端基夫(山形ロケ)、和田大輔(茨城ロケ) /脚本協力:大江崇允/音楽:髙位妃楊子/衣裳デザイン・扮装統括:柘植伊佐夫/撮影:池田直矢/照明:舘野秀樹/録音:秋元大輔/美術:磯貝さやか/装飾:折戸美由紀/小道具:佐藤桃子/編集:片岡葉寿紀/音響効果:井上奈津子/VFX スーパーバイザー:朝倉怜/衣裳デザイン補・スタイリスト:玉置博人/スタイリスト:橋本ゆか/ヘアメイク:会川敦子/VFX プロデューサー:川瀬基之/音楽プロデューサー:安井輝/宣伝プロデューサー:小口心平 /キャスティング:北田由利子/助監督:山口晋策/制作:セディックインターナショナル、日商賽奇客有限公司、井風國際娛樂有限公司/製作:映画『雨の中の慾情』製作委員会/配給:カルチュア・パブリッシャーズ
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