TOP  >  イベント/セミナー紹介  >  女性初ベルリン国際映画祭金熊賞受賞!ハンガリーの至宝『メーサーロシュ・マールタ監督特集』5・26より公開!
MAY 07, 2023 イベント

女性初ベルリン国際映画祭金熊賞受賞!ハンガリーの至宝『メーサーロシュ・マールタ監督特集』5・26より公開!

ハンガリーが誇る映画監督の一人であり、女性として初めてベルリン国際映画祭金熊賞に輝いたメーサーロシュ・マールタ。その後も、カンヌ国際映画祭での受賞歴をはじめ国際的な評価を得ながらも、彼女の作品はいずれも日本では劇場未公開の憂き目にあった。今回の企画『メーサーロシュ・マールタ監督特集』は、国際的な評価を得ながらも日本では上映の機会に恵まれなかったマールタ監督の女性の主体性を脅かす社会の相貌(そうぼう)にカメラを向けてきた誠実なまなざしに触れる特集上映となる。

イザベル・ユペール、アンナ・カリーナ、デルフィーヌ・セイリグ……名だたる俳優を魅了し、アニエス・ヴァルダがオールタイム・ベストのひとつとしてその作品を挙げた、ハンガリーの映画監督メーサーロシュ・マールタ。彼女は第二次世界大戦中、スターリンの粛清が吹き荒れる中、両親を亡くし、孤児としてソビエトとハンガリーを行き来する人生を送っていた。彼女の作品にハンガリー事件(1956 年)やファシズムの記憶が度々刻まれるのも必然だ。そしてそれは、ロシアによるウクライナへの侵攻でヨーロッパ世界が揺れる今こそ再考すべき歴史であることは言うまでもない。

本特集では、珠玉の作品群の中から、1975 年ベルリン国際映画祭金熊賞に輝いた『アダプション/ある母と娘の記録』をはじめ、青春音楽映画の決定版『ドント・クライ プリティ・ガールズ!』、ドキュメンタリー作家としてキャリアをスタートさせたメーサーロシュが、作為性や修飾を極限にまで削ぎ落した真実の記録『ナイン・マンス』、結婚生活に絡めとられる二人の女性の連帯を、厳しくも誠実なまなざしで捉えた精緻な秀作『マリとユリ』、イザベル・ユペール最初期の重要な出演作であり、見落とすことができない意欲作『ふたりの女、ひとつの宿命』の 5 本を日本初公開する。

メーサーロシュ・マールタ監督/プロフィール:1931 年、ハンガリーの首都ブダペシュトに生を受ける。ファシズムが台頭する戦間期、両親とともにキルギスへ逃れるも、父親はスターリンの粛清の犠牲となり、その後、母は出産で命を落とした。ソヴィエトの児童養護施設に引き取られ、戦後ようやくハンガリーへ帰郷する。1968 年から長編映画を撮り始める。残酷な社会のなかで日々決断を迫られる女性たちの姿を描きながら、ファシズムの凄惨な記憶や、東欧革命の前兆であるハンガリー事件の軌跡など、そのまなざしは暴力と化す社会の相貌をも見逃さない。1975 年の『アダプション/ある母と娘の記録』は、第 25 回ベルリン国際映画祭において女性監督としてもハンガリーの監督としても史上初となる金熊賞受賞の快挙を成し遂げた。その後もカンヌ国際映画祭をはじめ数々の国際映画祭で受賞を果たし、同時代のアニエス・ヴァルダらと並び、もっとも重要な女性作家としての地位を確立した。最新作は 2017 年の「AuroraBorealis: Northern Light」。

メーサーロシュ・マールタ監督

『メーサーロシュ・マールタ監督特集』ラインナップ

『ドント・クライ プリティ・ガールズ!』

(英題:Don’t Cry, Pretty Girls!|原題:Szép lányok, ne sírjatok!)1970年/ハンガリー/ヨーロピアン・ビスタ/モノクロ/89分/2Kレストア

<Story> ビート・ミュージックのファンである若者たちは、うだつの上がらない日々を工場での労働に費やしている。ユリは不良青年のうちのひとりと婚約しているのだが、とあるミュージシャンと恋に落ちた。ギグを開くという彼とともに、ユリは小旅行へ出かける。しかし嫉妬深い婚約者と彼の不良仲間たちは執拗にふたりを追いかけ……。

<Introduction> バーバラ・ローデン『WANDA/ワンダ』やケリー・ライカート『リバー・オブ・グラス』をも思い起こさせる、伝統的な逃避行劇の見事な解体。閉塞的かつ家父長的な社会から抜け出せぬ若者たちの思いを、ビート・ミュージックが鮮やかに代弁する。主人公ユリがみせる表情の微妙な変化に、最後まで目が離せない。

『アダプション/ある母と娘の記録』 

※1975年金熊賞受賞作(英題:Adoption|原題:Örökbefogadás)1975年/ハンガリー/ビスタ/モノクロ/88分/4Kレストア

<Story> 43歳のカタは工場勤務の未亡人。彼女は既婚者と不倫関係にある。カタは子どもが欲しいのだが、愛人は一向に聞き入れない。とある日カタは、寄宿学校で生活するアンナと出会い、彼女の面倒を見ることにした。次第にふたりは奇妙な友情を育んでいく。

<Introduction> アニエス・ヴァルダが『ラ・ポワント・クールト』で交わらない視線をパートナー同士の断絶として実践したのとは対照的に、本作ではまるで親密さと比例するかのように視線の交差が慎重に避けられていく。形容し難い緊張感のなか、時おり示されるふたりの親密なシーンが美しい。

『ナイン・マンス』
(英題:Nine Months|原題:Kilenc hónap)1976年/ハンガリー/スタンダード/カラー/94分/4Kレストア

<Story> ユリは工場勤務の傍ら、農学を学んでいる。工場の上司は彼女と恋に落ちる。ユリは彼に誠実な関係を望むいっぽう、前パートナーとの間に子どもがいる事実を隠している。やがて彼女の秘密は明らかになるのだが、上司は子どもの存在を受け入れるだけの心の準備ができておらず……。

<Introduction> ミケランジェロ・アントニオーニの『赤い砂漠』を手本のひとつとしたかに思われる、息詰まるような画面設計。そうした閉塞的な社会で激しくぶつかり合う男と女。相手の可能性を否定する家父長的な力学は、現代にも通用してしまう深刻なテーマだろう。

『マリとユリ』
(英題:The Two of Them|原題:Ők ketten)1977年/ハンガリー/スタンダード/カラー/98分/4Kレストア

<Story> マリの夫は偏狭な男で、ユリの夫はアルコールに依存している。彼女たちはつらい夫婦生活を乗り越え、慰めを求めあう。互いの葛藤を知ったふたりは、それぞれの人生を歩むべく、ある決断をする。

<Introduction> 少しずつ取り乱していくマリの姿は、『ジャンヌ・ディエルマン』のデルフィーヌ・セイリグを思い起こさせる。世代の離れた女性二人が連帯し、男性優位の結婚生活に依拠しない未来を選択する。その姿に、切実さとともに少しばかりの勇気をもらえる。

『ふたりの女、ひとつの宿命』
(英題:The Heiresses|原題:Örökség)1980年/ハンガリー、フランス/16:9/カラー/105分/4Kレストア

<Story> 1936年。ユダヤ人のイレーンは、裕福な友人・スィルヴィアからある相談を持ち掛けられる。スィルヴィアは不妊に悩んでおり、イレーンに自身の 夫との間で子どもをつくってほしいと言う。そうして生まれた子どもに莫大な財産の相続が約束されたのだが、彼らの関係は悪化の一途をたどる。その頃世界ではファシズムが台頭し……。

<Introduction> 同じ服を身にまとい、格好を揃えるイレーンとスィルヴィアは、ヴェラ・ヒティロヴァ『ひなぎく』のマリエたちを彷彿とさせる。代理出産をめぐり変容していく彼女たちの連帯、そして宿命に絡めとられながらも凛として生きる女性たちの強さ。イザベル・ユペールの可憐な美しさも見逃せない。

後援 駐日ハンガリー大使館/リスト・ハンガリー文化センター 配給:東映ビデオ
公式 HP:meszarosmarta-feature.com

© National Film Institute Hungary – Film Archive

『メーサーロシュ・マールタ監督特集』は2023 年 5 月 26 日(金) 新宿シネマカリテほか全国にて順次公開


バックヤード・コムとは

エンタメの裏側を学ぶ
ライブ・ラーニング・サイト

SNSアカウントをフォロー

TOP  >  イベント/セミナー紹介  >  女性初ベルリン国際映画祭金熊賞受賞!ハンガリーの至宝『メーサーロシュ・マールタ監督特集』5・26より公開!